2007 年 63 巻 1 号 p. 45-54
選択肢集合の拡大過程を対象に,情報処理アプローチと費用便益アプローチの知見を整理し,それぞれのアプローチの核心的な部分を抽出して,一つに統合した概念モデルを提案した.そして,買い物などの非日常交通の目的地選択問題に適用して,行動データと心理データを併用し,概念モデルの検証を行った.結果より,費用便益アプローチに基づき提案した選択肢集合拡大前後の期待効用の増分が選択肢集合の拡大に正の影響を与える;情報探索アプローチに基づき提案した現有選択肢に対する満足度が情報探索の活発さに影響する;選択肢集合拡大の便益が高い場合でも情報探索が伴わないと新選択肢への関心が発生しないという三つの仮説が同時に支持され,両アプローチの有効な融合が実現できた.