土木学会論文集D
Online ISSN : 1880-6058
ISSN-L : 1880-6058
63 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
和文論文
  • 山本 俊行, 木内 大介, 森川 高行
    2007 年 63 巻 1 号 p. 14-23
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/03/20
    ジャーナル フリー
     セカンドカー型自動車共同利用システムを対象として,世帯内での自動車利用の最適化を考慮した上で自動車共同利用システムの潜在需要を分析した.その際,現状の利用状況や利用意向からの需要予測ではなく,一定の条件を満たすトリップが共同利用システムを利用するとの仮定に基づく潜在需要の推計を行った.愛知県豊田市を対象とした分析結果から,世帯内で利用を最適化すると平日で約35%,休日で約55%の保有自動車を削減可能であることが示された.また,共同利用システム導入時の需要規模は10世帯に1台,1台で1日3トリップ程度と計算された.さらに,軽自動車保有世帯や人口密度の高い駅周辺地域の方が共同利用システムの潜在需要が大きいことが示された.
  • 石倉 智樹, 土谷 和之
    2007 年 63 巻 1 号 p. 36-44
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/03/20
    ジャーナル フリー
     本研究は,空港容量の拡大が我が国の航空輸送サービス産業の生産効率性に寄与してきた効果を,全要素生産性アプローチにより推定し,応用一般均衡モデルとの結合により,その国民経済的効果についても推定する手法を提案する.さらに本研究は,本手法を羽田空港を事例に適用し,これまでの発着容量拡大がもたらしてきた経済効果を推定するとともに,再拡張によってもたらされる経済効果についても試算を行った.
  • 李 成, 山本 俊行, 森川 高行
    2007 年 63 巻 1 号 p. 45-54
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/03/20
    ジャーナル フリー
     選択肢集合の拡大過程を対象に,情報処理アプローチと費用便益アプローチの知見を整理し,それぞれのアプローチの核心的な部分を抽出して,一つに統合した概念モデルを提案した.そして,買い物などの非日常交通の目的地選択問題に適用して,行動データと心理データを併用し,概念モデルの検証を行った.結果より,費用便益アプローチに基づき提案した選択肢集合拡大前後の期待効用の増分が選択肢集合の拡大に正の影響を与える;情報探索アプローチに基づき提案した現有選択肢に対する満足度が情報探索の活発さに影響する;選択肢集合拡大の便益が高い場合でも情報探索が伴わないと新選択肢への関心が発生しないという三つの仮説が同時に支持され,両アプローチの有効な融合が実現できた.
  • 葛西 誠, 内山 久雄, 野中 康弘
    2007 年 63 巻 1 号 p. 65-75
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/03/20
    ジャーナル フリー
     高速道路における車両追従挙動を適切に表現できるモデルは未だ存在しないとされる.本研究では,実交通流中の走行試験から車間距離・相対速度平面上の軌跡がスパイラル状曲線となることに着目し,追従状態にある2台の車両のバネ質点系に希望車間距離に相当する強制外力が作用する非線形系の類似として捉えたモデルを記述する.さらにビデオ観測データを用いて検証を行なった結果,本モデルが車間距離・相対速度を良好に表現され,不特定多数のドライバーの追従挙動についても本モデルによって説明可能であることを示している.
  • 河野 達仁, 野添 孝敬
    2007 年 63 巻 1 号 p. 76-87
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/03/20
    ジャーナル フリー
     現在,道路整備の便益計測は交通市場のみに着目した計測方法が一般的である.しかし,この方法は完全競争経済においてのみ正確な計測方法であり,市場の失敗のある経済においては用いることができない.本論文は市場の失敗の原因として,商業における空間的価格競争を取り上げる.空間的価格競争が存在する場合,道路整備の便益は交通市場からだけでは観察できない.本論文では,商業立地形態に関して(I)郊外に大規模商業施設のみが立地,(II)郊外において大規模商業施設と小規模商業の2種類が競合立地,(III)郊外と都心に立地する商業施設が競合する3パターンを想定し,道路整備を行った際に各地点の商業立地や地点別の価格付けがどのように変化するかを示すとともに,便益計測手法を提案する.
和文報告
  • 溝上 章志, 橋内 次郎, 斎藤 雄二郎
    2007 年 63 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/02/20
    ジャーナル フリー
     地方鉄道の廃止が相次いでいる一方で,LRTへの期待が高まっており,各地でその導入が計画されている.昭和28年以降,連続で赤字経営を余儀なくされている熊本電鉄でも,路線の都心乗り入れとシステムのLRT化を骨子とした計画案を発表した.本報告では,沿線住民を対象に実施したアンケート調査より,沿線住民のLRTへの転換や自治体の財政支援に対する意向を明らかにした.また,非集計型手段選択モデルによる交通機関分担プロセスと交通機関別詳細ネットワークへの均衡配分プロセスを含む技法による需要予測,および「鉄道プロジェクトの費用対効果分析マニュアル991)」に準拠した費用便益分析を行った.その結果,本LRT化計画案は社会経済的効率性だけでなく事業採算性も高いプロジェクトとなる可能性があることが示された.
  • Susanne ELFFERDING, 卯月 盛夫
    2007 年 63 巻 1 号 p. 24-35
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/03/20
    ジャーナル フリー
     ドイツでは近年,自転車ツーリズムが観光の唯一の成長分野となり,数日間の旅ができる長距自転車道が重要な観光資源となっているが,日本でも「大規模自転車道」や「サイクリングツアー」などの自転車ツーリズム事業があるものの,自転車ツーリズムに関する研究はまだ多くない.そこで本研究はドイツの長距離自転車道網の構成と延長や整備状態やターゲットグループなどの特徴の他に自転車ツーリズムの旅行目的や旅行頻度,経済効果や社会的位置づけなど,自転車旅行者の傾向を分析した.さらにドイツで4年連続人気トップとなっているヴェーザー自転車道の概要と特徴,広域的な調整を行っている団体,および地図やパンフレットなどの観光情報,利用者の特性,そして飲食店・宿泊施設と自治体との協力などの実態を調査分析した.
  • 氏原 岳人, 谷口 守, 松中 亮治
    2007 年 63 巻 1 号 p. 55-64
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/03/20
    ジャーナル フリー
     朝市などの非定常型のマーケットを中心市街地再生のきっかけにしようとする試みが現在各所で行われている.このような朝市の買い物行動は,日常のそれと比較してグループ来訪に卓越した点が見られると類推される.そこで本研究では倉敷市で開催される朝市の来訪者にアンケート調査を実施し,グループ行動の基本的な特性,及び関連する要因を定量化した.分析の結果,単独来訪者と比較して,グループ来訪者は朝市を非日常的なレジャーと明確に位置づけており,その一方でグループ来訪者のリピート性や支出額は単独来訪者より相対的に低いことも明らかになった.さらに,いわゆる観光地を訪れるグループ行動と比較して,朝市へのグループ来訪者の交通環境負荷は低く抑えられていることをあわせて明らかにした.
feedback
Top