抄録
景観法の施行を受け,地域の歴史や文化,風土が重要視される時代となった.本研究では,高齢化や過疎の問題を抱え衰退の危機にある中山間地を対象に,地域に対するインフラストラクチャーの適切なデザインやマネジメントを考える.具体的には,長野県飯田市下久堅柿野沢地区において実施されてきた道普請を事例に,セルフビルドの環境づくりが地域にもたらすソーシャルキャピタルを実証する.研究の結果,地域住民は自ら住まう環境を自分たちの手で構築,管理することにより,適切な環境改変のローカルルールが継承され,変化する社会情勢に対応したコミュニティが維持されてきたことが分かった.地域コミュニティによって愛着を持って整備されてきた道というインフラストラクチャーは,地域景観の基盤となり,統合化された環境認識の基盤となっている.