本研究では,貯水池の所有と運営に関する上下分離型水力発電プロジェクト契約における最適発電政策について考察する.運営者は完全競争的な電力市場において,河川流量リスク,電力価格リスクという2種類のリスクを考慮しながら期待収益を最大にするように電力を生産する.所有者は,契約期間内のリース料金収益の最大化を図る.以上のプロジェクト契約における運営者の行動を,確率的動的計画法を用いて期待収益最大化モデルとして定式化し,プロジェクト価値とリスクを計測する方法を提案する.さらに,運営者が顧客と直接取引契約を締結する場合も取上げ,運営者と顧客の間のリスク分担構造を分析する.最後に,アメリカ合衆国におけるOroville Damを対象として,本研究で提案した方法論の有効性について実証的に検証する.