本研究では,供給量制約のある独占的サービス市場における事前割引料金システムの導入効果を理論的に分析する.事前割引システムは,サービス消費に対する不確実性と家計のサービス選好に対する異質性が存在する状況の下で,より大きな効用を持つ家計に優先的にサービスを割り当てるメカニズムを有することを指摘する.その上で,同質のサービスが供給される独占市場を対象とした市場均衡モデルを定式化し,事前割引料金システムの導入がもたらす経済便益を評価する.事前割引料金システムの導入により,独占企業の利潤,社会的厚生の双方は増加するが,家計の経済厚生は逆に減少することを明らかにする.さらに,家計の経済厚生低下を抑止するためには,料金規制が必要であることを指摘する.