2009 年 65 巻 4 号 p. 432-440
本研究は,環境配慮行動など利他的行動の心理プロセスにおいて重要な役割を果たす道徳意識に着目し,その階層構造モデルとして「階層的規範活性化モデル」を提案するとともに,そのモデルを用いて,自動車と公共交通に関するモビリティ・マネジメント授業実践を受けた小学生の心理データを分析した.その結果,道徳意識が階層的に活性化していく可能性が示されるとともに,「住民参加」や「規制や事業の受容」ならびに「環境問題」に関わる道徳意識は,必ずしも論理構造を認知していなくとも活性化され得る一方で,住民参加や規制・事業の受容とは関係のない「交通問題」に関する道徳意識は,その道徳意識が活性化されるべき論理構造を理解することではじめて活性化され得る,という可能性が示唆された.