抄録
これまでの先行研究において,オルテガの論ずる人々の「大衆性」が,土木計画における環境問題や公共事業合意形成問題に対して否定的な影響を及ぼし得ることが指摘されている.この結果を受けて,本研究では,個人の大衆性を低減するための方途を探ることを目的とし,人々とのコミュニケーションを通じた態度変容施策の一つとして,「読書」の効果について検討した.そして,内村鑑三著『代表的日本人』(1908)に着目し,本書を通読することによって,人々の大衆性が低減するという仮定を措定し,アンケート調査を通じて本仮説を実証的に検証した.その結果,本研究の仮説が支持され,『代表的日本人』を通読することによって,人々の大衆性が低減し得る可能性が示された.