抄録
洪水調節を目的に含むダムには明らかに洪水調節機能があるにもかかわらず,その事実が人々に正確に認識されることは一般に希であり,とりわけ洪水災害直後においては“加害者としてのダム”のイメージ,あるいは消極的に表現したとしても“効果のないダム”のイメージが顕在化することが多いのが実情と思われる.本論文は,ダムの洪水調節機能に対する住民理解が,構造物として備え持つ実際の洪水調節機能のありようと大きく乖離しているのが実態であるならば,それは正しく是正されるべきとの立場のもと,そのような乖離の背景を整理するとともに,乖離を是正するための方策の方向性を検証したものである.