土木学会論文集D
Online ISSN : 1880-6058
ISSN-L : 1880-6058
66 巻 , 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
和文論文
  • 藤倉 規雄, 吉野 隆, 水谷 隆夫, 前田 哲史
    2010 年 66 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
     劣化の進行が時間のべき乗に従う物理劣化予測式を対象とし,初期条件や環境等による変動を反映した確率モデルを導き,コストが最小となる最適な点検・補修時期を導出する手法を開発した.この手法は,確率モデルの導出と選択,複数の劣化機構を経由する場合の確率モデルの結合,コスト期待値の最小化から構成されている.この手法は,地中に埋設されたライフライン設備のように,点検に相当の時間とコストを必要とし,点検データの蓄積が少なく,劣化が潜在的に進行する場合に,既往の物理劣化予測式を活用できるようにした点に特徴がある.これらの手法を地中の通信用コンクリート構造物に適用し,実構造物のデータを用いて適用性の確認を行った.
  • 山口 敬太, 出村 嘉史, 川崎 雅史, 樋口 忠彦
    2010 年 66 巻 1 号 p. 14-26
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
     本研究は,近世の嵯峨野を対象として,紀行文中の風景記述の分析を通じて,1) 鑑賞対象,2) 風景鑑賞時に主体に想起されている過去の風景表現やイメージ,3) 主体の態度や行為,得た印象,を把握することで,嵯峨野における風景鑑賞のあり方を明らかにすることを目的としている.具体的には,眺望や神社仏閣のほか,歌枕・四季の名所の風景,物語・故事の風景,遊びなどの様々な風景記述ごとについて,イメージの追体験,視覚的風景の観賞などの風景鑑賞のあり方とその特徴を示した.その結果,近世の嵯峨野において,地形条件等による景観の多様性と,多様な風景のイメージに合致した景観の状態,さらには多様な風景鑑賞のあり方によって,様々な風景が重層的に生まれていたことを示した.
  • 足立 幸郎, 藤井 康男, 玉川 大, 岩里 泰幸, 山田 幸一郎, 中村 裕樹
    2010 年 66 巻 1 号 p. 27-39
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
     阪神高速道路8号京都線稲荷山トンネル山科坑口部は坑口を出てから交差点までの距離が約140mと短く,トンネル内を走行した車両が十分に減速できない可能性があることが危惧されていた.その解決策として,従来は建築等の分野で緊張感緩和等のために採用されているシークエンスデザインを,交通安全対策の手法として利用することを発案し,シークエンスデザインが運転者に与える影響についてアンケート等を通じて検討を行い,トンネルへの応用方法について検討した.そしてCG動画を用いた室内実験や完成後の実車実験により,検討したシークエンスデザインによる速度抑制効果を定量的に検証した.
  • 出村 嘉史, 大島 充功, 山口 敬太, 樋口 忠彦
    2010 年 66 巻 1 号 p. 46-53
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
     遠景にはなだらかに見える山並みも,接近すると,それまで見えなかった幾つかの峰が劇的に立ち現れることがある.本研究は,京都東山一帯を対象として,このような固有の山を眺め認識できる限られた領域の分布特性を明らかにすることを目的とする.そのために,GISを用いて隈なく再現した透視図を分析し,ある山が視界の中で最も高く見える視点の範囲(「主峰視点領域」)を特定した.その結果,数多くの細かな主峰視点領域が,東山の山辺一帯に集積している様子が示され,現在の多様性の基と考えられる二種類の分布特性(二重分布・横断分布)が明らかにされた.主峰視点領域は,地形認識の一側面を客観化したものであり,山辺に集積した文化的領域の形成要因を説明するための有用な基礎情報となる.
  • 桑野 将司, 藤原 章正, 塚井 誠人, 張 峻屹, 岩本 真由子
    2010 年 66 巻 1 号 p. 54-63
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
     本研究では自動車の保有期間と年間走行距離の相互依存性を考慮した自動車保有・利用行動の同時決定モデルの開発を行った.具体的には,2変量間の非線形な相互依存性を取り扱うことができるコピュラ関数を用いた多変量生存時間モデルを構築し,保有期間と走行距離の間に異なる依存構造を表現する正規コピュラ,ガンベル・コピュラ,クレイトン・コピュラ,フランク・コピュラの適用を行った.2006年10月に中国地方の5県を対象に行われたアンケート調査のデータを用いた実証分析の結果,保有期間と年間走行距離の間にクレイトン・コピュラを適用したときモデル適合度が最も高く,利用行動と保有行動の間に負の相互依存性が存在することを明らかにした.開発したモデルの現況再現性は従来の分析手法よりも高く,その有効性が実証された.
  • 岡林 隆敏, 関 暁麗, 山口 美由紀, 北垣 聰一郎
    2010 年 66 巻 1 号 p. 64-77
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
     長崎市では扇形の出島を顕在化させるために,出島石垣の発掘,解体・修復が進められてきた.しかし,出島築造時の設計法や施工法に関する歴史的資料がほとんど残されていない.本研究は,出島の築造と石垣の施工に関する技術を,石垣発掘調査や測量とGISによる解析より復元すると共に,その結果に基づく出島石垣の修復と復元の方法を述べたものである.まず,GISを用いて出島当時の境界を推定し面積を計算した.次に,扇形とされてきた出島の外周を,絵図の照査と石垣根石の測量から,直線を組合せた折れ線で構成されていることを明らかにし,この形状で修復を行った.さらに,古絵図の照査より,出島北側対岸の斜面の人工的形状に着目し,出島埋め立て土量の評価と採掘場所の特定を行った.
  • 片田 敏孝, 及川 康
    2010 年 66 巻 1 号 p. 78-88
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/03/19
    ジャーナル フリー
     洪水調節を目的に含むダムには明らかに洪水調節機能があるにもかかわらず,その事実が人々に正確に認識されることは一般に希であり,とりわけ洪水災害直後においては“加害者としてのダム”のイメージ,あるいは消極的に表現したとしても“効果のないダム”のイメージが顕在化することが多いのが実情と思われる.本論文は,ダムの洪水調節機能に対する住民理解が,構造物として備え持つ実際の洪水調節機能のありようと大きく乖離しているのが実態であるならば,それは正しく是正されるべきとの立場のもと,そのような乖離の背景を整理するとともに,乖離を是正するための方策の方向性を検証したものである.
和文ノート
  • 伊地知 恭右, 羽鳥 剛史, 藤井 聡
    2010 年 66 巻 1 号 p. 40-45
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/02/19
    ジャーナル フリー
     これまでの先行研究において,オルテガの論ずる人々の「大衆性」が,土木計画における環境問題や公共事業合意形成問題に対して否定的な影響を及ぼし得ることが指摘されている.この結果を受けて,本研究では,個人の大衆性を低減するための方途を探ることを目的とし,人々とのコミュニケーションを通じた態度変容施策の一つとして,「読書」の効果について検討した.そして,内村鑑三著『代表的日本人』(1908)に着目し,本書を通読することによって,人々の大衆性が低減するという仮定を措定し,アンケート調査を通じて本仮説を実証的に検証した.その結果,本研究の仮説が支持され,『代表的日本人』を通読することによって,人々の大衆性が低減し得る可能性が示された.
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