遠景にはなだらかに見える山並みも,接近すると,それまで見えなかった幾つかの峰が劇的に立ち現れることがある.本研究は,京都東山一帯を対象として,このような固有の山を眺め認識できる限られた領域の分布特性を明らかにすることを目的とする.そのために,GISを用いて隈なく再現した透視図を分析し,ある山が視界の中で最も高く見える視点の範囲(「主峰視点領域」)を特定した.その結果,数多くの細かな主峰視点領域が,東山の山辺一帯に集積している様子が示され,現在の多様性の基と考えられる二種類の分布特性(二重分布・横断分布)が明らかにされた.主峰視点領域は,地形認識の一側面を客観化したものであり,山辺に集積した文化的領域の形成要因を説明するための有用な基礎情報となる.