抄録
腐食が進行した鉄筋は健全な鉄筋と異なる力学特性を示すことが多い.これは腐食による断面欠損が一般に均一でなく,特に断面積が最小になっている局所の変形挙動が全体の力学特性に影響を与えるためと推測される.本研究ではまず,構造物中の鉄筋のレプリカを作製して腐食状況を調べる技術を開発し,その有用性を確認した.次いで,環境条件が相違する実構造物や,長期暴露試験体等に配置されている鉄筋の腐食状況について,鉄筋のレプリカあるいは構造物等から切り出した鉄筋を試験片として,3Dスキャナにより詳細に調査した.また,3Dスキャナのデータを元に,ノギスによって鉄筋の直径を計測した場合の精度も併せて検証した.最後に,鉄筋の腐食による断面欠損の程度と分布状況が腐食鉄筋の力学性状に及ぼす影響を考察した.