日本家政学会誌
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介護保険制度における家族介護者支援のための情報提供
―4県市町村調査から―
倉田 あゆ子
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2022 年 73 巻 2 号 p. 89-99

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抄録

 日本で実際に行われている家族介護者への主な公的サービスは, 介護保険法の第六章地域支援事業等の中の「家族介護支援事業」である. 本研究は, この家族介護支援事業の中でどのような情報提供が行われているのか現状を明らかにし, その課題を把握することを目的とした. 4県の合計160市町村の高齢者福祉担当課を対象に自記式質問紙を用い, 郵送法により調査を行った. 有効回収は86市町村 (53.8%) であった.

 家族介護者への情報提供に関して9つの視点から質問したところ「利用可能なサービスについて」が60.5%と最も多く情報提供がされており, それ以外の8つの視点は情報提供が十分ではない実態が明らかとなった. 家族介護者への情報提供が行われている具体的な事業名や方法は「家族介護者への直接的なアプローチ」と「要介護者の介護保険サービス利用に関連したアプローチ」に大別された. 家族介護者向け情報提供の既存資料の活用が37.2%・独自資料の作成は27.9%であった. 情報提供につながる独自事業や情報提供のための既存資料の活用・独自資料の作成状況が明らかとなり, 先進的な取り組みを他の市町村と共有していくという方向性が示唆された. さらに, 行政との接点のない家族介護者へどのようにアプローチするのかという課題も示された.

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© 2022 一般社団法人 日本家政学会
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