2009 年 65 巻 1 号 p. 103-117
プレストレストコンクリート部材中のPC鋼材に関して,緊張力が鋼材腐食に及ぼす影響を評価した研究は少ない.また,コンクリート中鉄筋の発錆限界塩化物イオン濃度については多数の研究が実施されているが,グラウトの塩化物イオン濃度が鋼材腐食に及ぼす影響に関する研究は少ない.以上を踏まえ,グラウトの塩化物イオン濃度およびPC鋼材の緊張力が鋼材腐食に及ぼす影響について評価した.そのため,緊張力を有するPC鋼材を,セメント質量に対して0.02∼3.6%の塩化物イオンを含有したグラウトに埋設した.実験の結果,1)グラウトの塩化物イオン濃度が0.09%以下であれば,PC鋼材の腐食発生の可能性は低いこと,2)PC鋼材に与えられる緊張力は,実施工の範囲内(引張強度の80%以下)であれば,腐食発生に影響を及ぼさないこと,が確認された.