抄録
この論文は土木のコンクリート工学分野における人材育成の現状を概説するとともに、これからの建設分野の動向を踏まえ、今後どのように対処していくべきかを取りまとめたものである。我が国における高等教育の現状と現在のコンクリート技術教育は、今までの技術の歴史を踏まえた新規コンクリート構造物を建設するためのノウハウを教えることに力点がおかれてきた。「少子高齢化」を迎えるこれからの我が国の動向を考慮すると、維持管理をも含めたより広い教育が必要とされる。今まで多くの業務を担ってきた団塊の世代が実務から離れていくため、従来の教育ばかりでなく「技術の伝承」を念頭に置いた教育・訓練が重要となる。このためには「復元設計」に代表されるような過去に行なわれた設計・施工方法を学ばせるとともに現存している構造物の安全性などを確認する業務などが考えられ、少数の精鋭な技術者を育成するばかりでなく、産学連携および諸外国との適切な連携が重要となる。