2013 年 69 巻 7 号 p. III_495-III_501
本研究では, 近年, 資源量の減少が危倶されている二枚貝(イソシジミ)の成育状況(肥満度)と, それを取り囲む餌料環境に着目し, 炭素安定同位体, 脂肪酸組成および脂肪酸を構成する炭素安定同位体比を指標として, 変化特性を解析した. その結果, バルクレベルの炭素安定同位体比分析による有機物の起源解析では, 肥満度との関係は認められなかった. しかし, 脂肪酸分析によりEPA, DHA含有量が増えると肥満度が向上していることが明らかとなった. さらに, EPA, DHAを構成する炭素の安定同位体比が上昇すると肥満度が減少する傾向が明らかとなり, 餌料源に含まれる陸起源有機物の寄与が重要となっている可能性が示唆された. 今後, 餌料源に含まれる有機物の起源解析を進めることは, 干潟を含めた河口域における生態系保全を考える上で重要な課題である.