抄録
ダムの貯水機能に深刻な影響を及ぼす堆砂問題の解決には,上流域の土砂発生源を特定することが重要である.しかしながら,地形や地質条件によって崩壊地が多数存在する流域では,発生源の特定が困難である.そこで本研究では,九州南部の宮崎県一ツ瀬ダムを対象とし,ダム上流域に点在する崩壊地から採取した土砂と,建設当初から50年間にわたって貯水池に堆積した土砂の鉱物学の物理・化学的な特徴を解析し,両者の類似性からダム堆砂の発生源を特定した.元素・鉱物組成の類似性から,一ツ瀬ダム上流域における大藪衝上断層の直上・直下の土砂は,ダム堆砂と極めて高い類似性を示し,ダムに流入する土砂の発生源であると推察された.本研究で実施した鉱物学的解析法によって,ダム堆砂の発生源を特定できることが示唆された.