2016 年 72 巻 6 号 p. II_157-II_165
日本には約70種のシギ・チドリ類が飛来するが,このうち13種がレッドリストに掲載されている.これらの6種を対象に,九州沿岸部の生息適地を干潟とその周辺の土地区分に着目して推定し,これを踏まえて保全に向けた考察を行った.推定には,モニタリングサイト1000シギ・チドリ類調査による飛来データと土地区分を用いた.MaxEntによる解析の結果,河川・湖沼と干潟が重要である一方,森林や市街地は負の寄与が明らかになり,生息適地は,有明海や周防灘,八代海の沿岸部のほか,日向灘や奄美大島の沿岸部が推定された.レッドリスト記載種が飛来する生息地を保全するためには,保護区に指定されていない生息確率が高い場所の保護区の指定や干潟周辺も含めた保全が重要であり,日向灘や薩南諸島では現在飛来調査が少なく調査を行う必要があることが示唆された.