2016 年 72 巻 7 号 p. III_397-III_402
魚類は洪水時にその遊泳挙動を変化させ,流速の低下する場所や上流へ移動することが解明されている.加速度および流速は魚の遊泳挙動に影響を及ぼす要因と考えられる.本研究は負の加速度および減速後の流速とカワムツの挙動との関係について検討したものである.ピーク流速を固定し,負の加速度と減速後の流速を変化させ,開水路内のカワムツの挙動をビデオカメラで撮影した.その結果,カワムツの移動方向を決定する負の加速度の閾値は-0.5(1/s2)程度であり,負の加速度が-0.5(1/s2)より小さいときは上流側へ,-0.5(1/s2)より大きいときは下流側へ移動方向が変化することが判明した.また,減速は遡上を誘発することが示唆された.一方,減速後の流速が変化してもカワムツの遊泳挙動に影響を及ぼさなかった.