抄録
砂浜侵食による対策は様々な工法を組み合わせて実施されている.しかし,これらの対策は人工構造物や波による砂の流出に対するものであり,地球温暖化を想定した対策は検討されていない.本研究では,地球温暖化に対する適応政策を検討する際に必要な情報の提供を目的とし,著者らの既存研究より新しい交通網データ及び砂浜侵食の影響を用いて,仮想的な適応政策による費用対効果を算出した.具体的には,各都道府県の砂浜を対象に,気候モデルMIROCのRCP2.6とRCP8.5のシナリオの下,砂浜侵食による被害額を推計した.また,各都道府県の過去に行われた養浜事業の実績から,仮想的な適応政策の効果を検討した.データの更新により,砂浜侵食の被害額の過大推計を抑えられ,また,各都道府県の養浜事業を考慮した費用対効果となったと言える.