抄録
都市系面源汚染の中でも降雨時に流出する道路塵埃の汚染ポテンシャルは高い。道路塵埃には多環芳香族炭化水素類(PAHs)や重金属類が含まれており、それらが未処理のまま流出するため、受水域の生態系への影響が懸念される。筆者らは、予てより自動車交通由来の汚染に着目し、セスジユスリカを用いて高速道路塵埃の生態毒性を評価してきた。これにより、冬季に回収された道路塵埃で著しく羽化率が低下することを指摘したが、PAHsや重金属類による直接的な毒性は大きくなく、他の影響要因による可能性が想定されていた。本研究では、冬季の路面を特徴づけている融雪剤とPAHsによって、路面上で塩素化多環芳香族炭化水素類(ClPAHs)が生成しているとの仮説を考え、ClPAHsによる影響に着目して生態毒性試験を行った。融雪剤と紫外線を用いて作成した模擬冬季道路塵埃を作成し、セスジユスリカを用いた試験を行った結果、羽化・産卵毒性が顕著に現れた。冬期道路塵埃の生態毒性の再現に成功した一方で、いくつかのClPAHs含有率と羽化・産卵毒性の関係を検討したところ、両者の関係は明瞭ではなかった。