2021 年 77 巻 7 号 p. III_199-III_207
宮城県仙台市の都市下水処理場の流入下水と協力病院の排水からESBL産生菌を分離し,分離菌株について,腸内細菌科細菌の菌種同定とESBL産生遺伝子の検出を行うことで,その特徴付けを行った.1年間のモニタリングで,都市下水と病院排水からESBL産生菌をそれぞれ594株と102株単離した.Escherichia coliやAeromonas属,Klebsiella属を中心に,計10種類の菌種が同定され,それらの耐性菌からは全16種類のESBL産生遺伝子(bla)が検出された.検出されたblaの類型をすると,Class Aが最も多く,その中でもblaCTX-M group-9の検出率が両地点ともに最も高かった(都市下水:51.9%,病院排水:35.6%).Class Aのblaを保有し,かつカルバペネム系抗菌薬も分解できるClass Bの両遺伝子を保有するESBL産生菌も都市下水と病院排水から検出された.日本ではほとんど分離報告のない海外型カルバペネマーゼと呼ばれるblaKPCやblaOXA-1も検出され,ESBL産生菌の市中での蔓延状況の深刻さが浮き彫りとなった.