2008 年 64 巻 4 号 p. 394-402
GPSによる地盤変位の計測精度は受信機周辺の環境に依存する.たとえば,受信機の上空に樹木などがある場合,それらが人工衛星から送られる電波の障害となり,計測精度を劣化させる原因となる.本研究は,上空障害物による精度劣化を,計測点と障害物の背後にある人工衛星との間の二重位相差の残差によって検出できることを示し,上空障害物の影響を低減する方法を提案するものである.本報告では,提案方法を長期計測結果に適用してその妥当性を検証し,さらに,変位シミュレーション実験を行い,本方法が変位の計測精度の向上とともに変位を検出するまでに要する時間の短縮に寄与することを明らかにする.