抄録
生活排水の1人あたり汚濁負荷排出量(PDC)と経済関連指標との関係を検討した.地域レベルの経時的関係は,宍道湖・中海流域における1人あたり県内総生産等についてCOD, TN, TPの全てで逆U字型の環境クズネッツ曲線(EKC)の関係が見られた.ある時期の空間的関係は,都道府県別の2004年度のPDCと1人あたり県民所得について,CODは有意な1次の相関が見られ,TN, TPは有意な相関はなかった.途上国沿岸域におけるPDC-BODは,地域でまとまりがある傾向が見られた.諸条件が類似しているアジア,太平洋,アフリカ地域に限定すると,PDC-BODと1人あたりPPP-GNIおよび新しく導入した水衛生経済指標(WSEI)は,クズネッツが当初提唱した所得レベルと所得較差に類似した関係にあり,遷移域はそれぞれUS$3,000-4,000,1.0であった.