抄録
宮崎県小丸川水系の渡川ダム,松尾ダムおよび下流の川原ダムの堆積土砂に含まれる難沈降性の微細粒子について,粒径および成分・鉱物組成分析し,各ダムの微細粒子に関する物理・化学的性状を解析した.長期濁水化の原因粒子となる難沈降性粒子の粒径は,平均2μmであり,形状は平板状であった.三つのダムの難沈降性粒子の成分組成はほぼ同一であり,鉱物の結晶形から推察すると,小丸川水系の松尾ダムおよび川原ダムにおける濁水化の懸濁粒子の起源は,渡川ダムの堆積土砂であると推察された.難沈降性粒子の沈降速度は極めて遅く,2mm/hr(5cm/day)程度であった.洪水等によって大量の堆積土砂が撹拌混合され,ダム内において難沈降性粒子が高濃度に浮遊懸濁した状態になった場合,重力沈降のみによる清澄化は極めて困難であることが示唆された.