2012 年 68 巻 2 号 p. 433-450
従来,鉄道土留めにおける健全度診断は目視が主体であり,定量的な診断法は確立していないのが実情である.そこで,土留めのうち,もたれ壁に着目し,もたれ壁の安定性に係わる健全度を定量的に評価するために,従来から鉄道橋梁下部構造物の健全度診断に適用されている衝撃振動試験を既設もたれ壁に対して実施し,既設もたれ壁の振動特性の実態把握を行った.また,土留めの振動特性把握のために小型起振器を開発した.次に,もたれ壁の健全度と振動特性の関連性を把握するために,開発した小型起振器を用いて,もたれ壁の模型実験を実施し,健全度と振動特性に相関性があることが分かった.以上の結果と既設もたれ壁に対する振動試験結果を基に,パワースペクトルを用いた既設もたれ壁の安定性に係わる健全度診断法を提案した.