2018 年 74 巻 4 号 p. 488-499
矢板岸壁の安定的な供用に向け,経済的かつ耐久性を有する耐震対策としてジオセルを用いた手法を提案し,縮尺模型を用いた1G場の振動台実験に基づいてその対策効果を検討した.提案方法は控え版式矢板岸壁を対象とし,既存の控え工の上部に礫質土を中詰め材としたジオセルを新たに設置して矢板背面と定着し,引張り抵抗部材として用いるものである.実験の結果,控え版をジオセルに置き換えたケースと実際の施工を想定して控え工の上部にジオセルを追加したケースでは,従来式の控え版のみのケースに比べて地震時安定性が向上した.ジオセルによる地震時安定性向上の主な要因は,透水性の高い中詰め材を用いることでジオセル周辺では過剰間隙水圧の消散が促進され,加振中においてもジオセル上下面で生じる摩擦抵抗が低下し難かったことにある.