2022 年 78 巻 1 号 p. 1-13
既設石積み壁が空積み構造の場合は,積み石と栗石層が一体化されておらず,対策工として石積み壁前面へのコンクリート増設等を実施するが,鉄道沿線の石積み壁前面にある移設不可な線路設備等により施工困難となる.本論文では,それらに代わる工法として,積み石背面への注入工法を提案し,室内模型注入試験や現場注入試験により,注入材としての可塑性グラウトは,流動性が低く積み石目地からの漏出量が少ないことから高い充填性能を示すことを確認し,その注入方法を提示した.提案工法の補強効果を検証するため,模型による振動台試験を実施し,背面注入により積み石と栗石層が一体の挙動を示すことを確認し,棒状補強材との併用により壁体の残留変位が抑制され,より大きな加振加速度においても一体的な転倒モードになることが明らかとなった.