岩盤の割れ目に樹木や樹木根が侵入する場合,その成長に伴って割れ目が徐々に拡大して不安定な岩塊が生まれ,やがてこれが落石となることがある.この割れ目の拡大がどのようなタイミングで生じるかを観察するため,北海道函館市内の岩盤斜面にてハリエンジュが侵入する割れ目の変位を3年6ヵ月にわたり計測した.データに含まれる変位計と岩盤の周期的な熱変形を補正した結果,樹木の成長期にあたる5月上旬から8月中旬にかけて明瞭な開口変位が確認できた.さらに,細かい変位に対して気候条件などとの比較を行った結果,温度の影響が強い樹木の肥大成長に加えて,地震,遮るものがない方向からの風,降雨の際に割れ目が僅かに開く傾向がみられた.これらは樹木の成長により不安定になったブロックから生じる浮石型落石の誘因となり得る.