抄録
河道内砂礫州の植生繁茂状況の評価手法として,破断・倒伏後の木本の再生長・群落拡大特性,土砂堆積指標(SLI)を用いた細粒成分の堆積が遷移の早期化に及ぼす影響を考慮した植生動態モデルを開発した.荒川の熊谷大橋上流砂礫州(KU)にてモデルを構築し,荒川大橋上流砂礫州(AR)においてモデルの検証を行った.細粒成分の堆積が遷移の早期化に及ぼす影響を考慮したモデル化を加えた場合,KUでは,植物の破壊機構のモデル化のみでは再現できなかった河岸際の樹木群の侵入・定着を評価できた.本モデルをARに適用したところ,裸地域,シナダレスズメガヤ・ハリエンジュ群落の分布,繁茂面積を実測に近い形で評価できた.細粒成分の堆積とそれに伴う遷移速度の変化を考慮することが中長期の植生動態の評価に重要であることが示唆された.