抄録
中山間地域を対象としてソフト対策・減災などの災害対策の立案への利用を念頭に,計画降雨を大きく超える降雨災害における洪水氾濫被害を,既往の氾濫災害時に生じた被害実態と洪水氾濫流況との関連を元に推定した.本手法を用い,近年大きな洪水被害を受けた瀬戸内地域の中山間地域の二カ所を対象として事例分析を行った.二カ所での分析結果を踏まえ,可能最大降雨レベルの洪水氾濫を対象とした場合,浸水域の大部分で浸水深が2mを超え,流速も大きいため,冠水域での避難や救助活動は不可能となることが想定された.従って,冠水の前後の対応が重要であることを確認した.また,冠水域内の建物や交通ネットワークに壊滅的な被害が生じることを指摘し,そのことを踏まえた,災害後の対応の事前検討等の現実的な減災の方策について考察・提案した.