抄録
水力発電はダムによる治水調整機能を有する設備として重要な役割を果たしている.他方,電力需要に対して,出力を調整することにより需給のバランスを保ち,系統周波数の変動を抑制し,電力の安定供給として重要な役割も担っている.本論文ではダムの放流制御や給電運用面において降雨後における流量の逓減状況を予め把握することの重要性から,降雨後の流量定常値および逓減時定数の両推定値を用いることにより,予測の簡素化と精度向上を図った.具体的に,中部日本地域における矢作川上流域を対象として流量ピーク時点で観測される情報を用いて流量定常値および逓減時定数を推定し,得られた両推定値を用いて流量逓減予測を試みた.基底流量を定常流量値として用いる場合に比べて,流量の総量誤差で25.0%が18.6%までに予測精度が改善できた.