抄録
複雑な平面形状を有する筑後川感潮河道を対象として三次元流動シミュレーションを構築し,大潮期の塩水遡上の特徴について検討を行った.2002年9月の観測データを用いて精度検証し,水位,塩分,流速のいずれも十分な再現性があることを確認した.三次元計算の結果,本川・筑後川と比べて支川・早津江川における塩水の遡上・後退運動は活発でないことがわかった.これは,支川の河道距離が本川に比べ長く,また河道は蛇行し,川幅が途中で狭まっていることが原因と考えられる.さらに,本川においても導流堤の存在により,左右岸で塩水の挙動が異なり,左岸側澪筋において,水深が深いために塩水運動が活発であるとことが分かった.三次元流動シミュレーションにより河道地形が塩水遡上の時空間変動におよぼす影響を理解することができた.