土木学会論文集B1(水工学)
Online ISSN : 2185-467X
ISSN-L : 2185-467X
73 巻, 4 号
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水工学論文集第61巻
  • 北野 利一, 高橋 倫也, 田中 茂信
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_1-I_6
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     降水量の観測記録を用いる場合には,外挿は,治水計画に必要となる極値統計解析で不可避であり,信頼できる推定結果を得るためには,記録長が十分でないという問題に直面する.実際のところ,現実の降水量記録への極値理論の適用の可否が十分に確認できかったり,また,漸近モデルの適用が不十分であると,確率降水量の推定にバイアスがかかることもある.本研究では,d4PDFの出力結果を用いて,極値の漸近理論の適用性の確認法や,多数のアンサンブル標本から得られる推定結果のまとめる手法を提示する.
  • 三好 学, 田村 隆雄, 武藤 裕則, 安藝 浩資, 谷口 純一
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_7-I_12
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     本研究では,広い領域メッシュの解析結果を狭い領域メッシュの地盤標高モデルに反映させる手法を提案する.具体的には,25mメッシュでの計算結果から25mメッシュ内の水体積を求め,ポンド法の概念を用いて5mメッシュの地盤標高モデルをもとに水位に変換する.それをスプライン補間を用いてスムージングし,水面勾配を考慮することにより,5mメッシュでの計算結果と同程度の精度の浸水深分布を得る.各工程における浸水深分布を5mメッシュの計算結果と比較したところ,工程を踏むにつれて誤差が小さくなったことから,本研究の提案手法を妥当と判断した.
  • 鈴木 博人, 中北 英一, 高橋 日出男
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_13-I_18
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     1kmメッシュの国土交通省解析雨量について,東日本旅客鉄道株式会社が関東甲信越地方と東北地方に設置した498基の雨量計の観測値を用いて精度検証を行った.この結果,1時間雨量では両者の相関は高い場合が多いが,一部に乖離がみられる場合があること,24時間雨量では両者の相関は高いことを示した.また,1時間雨量では解析雨量が雨量計の観測値に比べて平均的には1割程度小さい値を示し,24時間雨量では両者は同程度の値を示すことが分かった.さらに,解析雨量の精度には地域的な偏りがあり,解析雨量と雨量計の観測値の相関が高い地域と低い地域があることが分かった.
  • Mohamad Basel AL SAWAF, Kiyosi KAWANISI
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_19-I_24
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     The aim of this contribution is to investigate the scaling exponent properties of a mountainous river flow fluctuations analyzed by means of detrended fluctuation analysis (DFA). Streamflow data were collected using Fluvial Acoustic Tomography System (FATS) which is a novel approach for continuous streamflow measurements at a high frequency. The crossover times evaluated from discharge data collected by FATS showed a relative delay estimated by 36±6% approximately in contrast to the times detected by the conventional streamflow measurement approaches. Moreover, the detected crossover time seems to be mainly a function of the watershed area and the higher number of intense precipitation events.
  • 齋藤 優人, 風間 聡, 会田 俊介
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_25-I_30
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     融雪水の浸透が地温に与える影響を明らかにするために実験装置を開発し室内融雪実験を行い地温の時系列変化を測定した. さらに, 測定された地温の時系列変化をもとに開発された一次元移流拡散モデルによる解析を行った. 定常時の地温を2通りの計算方法で与え, 土壌最上層において測定地温と計算地温時系列変化の最適化を行いともにナッシュ・サトクリフ効率係数(NS)の値として0.99を得た. この時の定常時不飽和透水係数の値としてそれぞれ2.81×10-6 m/sと2.03×10-6 m/sを得た. また, 過去に行われた地温実測値を開発したモデルにより概ね再現することができた. 再現した積雪期における地中伝導熱は約5 ~ 15W/m2で推移しており約2 ~ 3mm/dayに相当する融雪量の違いがあることが示された. また, 底面融雪に寄与する地中伝導熱には土壌の透水係数よりも熱拡散係数がより大きな影響を与えていることが示された.
  • 斉藤 翔吾, 齋藤 佳彦, 西村 浩一, 木村 一郎
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_31-I_36
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     本研究は,2016年3月に北海道ニセコ町で行われた現地スケールでの大規模雪崩実験の概要を示すとともに,MPS法に基づく数値雪崩モデルをこの雪崩実験に適用し,再現性の検証とモデルの改良を試みたものである.人工雪崩実験では開始から停止までの一連の典型的な雪崩挙動が観察され,その様子が貴重な画像データとして記録された.これを数値的に再現すべくMPS法による数値計算の適用を試みたところ,既往のモデルでは雪崩動態を適切に再現できなかった.そこで,雪崩流下中の侵食・堆積モデルを改良するとともに,雪崩底面にビンガム流体の構成則を導入したところ,極めて良好な一致が得られた.
  • 西原 照雅, 谷瀬 敦
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_37-I_42
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     積雪寒冷地においては,融雪水をダムに貯留して夏にかけての水需要をまなかっていること,融雪水は災害の原因となることから,融雪期が始まる前に山間部の積雪分布をできるだけ正確に把握することが重要である.本研究では,同一範囲を対象とした2回(2012年3月及び2015年3月)の航空レーザ測量により計測された積雪分布の類似性に着目し,ダム流域における積雪分布の推定方法を検討した.結果,複数年の積雪分布から共通する基礎的な成分を抽出することにより,毎年の積雪分布を精度良く推定することができる可能性が示された.本手法を応用することにより,ダム流域等の山間部において,簡易にかつ低コストで精度良く積雪分布を推定することができる可能性がある.
  • 原田 守博, 渡邉 英典
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_43-I_48
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     都市流域における豪雨時の雨水流出抑制方策の一つとして,ポーラスコンクリート(POC)舗装が各地で施工されている.POCは連続した粗大空隙により高い透水性をもつため雨水の浸透能力が高いものの,水平方向の排水能力も大きく,流出抑制のためには透水性を正しく評価することが必要となる.現在のPOCの透水試験法では,浸透流束が動水勾配に比例する線形ダルシー則を前提としたものとなっている.しかし,一般に粗粒媒体では流れが乱流となるため透水法則には非線形性が現れる可能性が高い.本研究では,POCの透水法則を明らかにする前段階として,細粒から粗粒にわたる均一粒径のガラス球を対象に詳細な透水実験を行い,粒径の増大に伴う透水法則の非線形性の形成を調べた.さらに流れの構造と透水法則との係わりについて水理学的検討を行い,粗粒媒体の非線形透水則に関する理論解を定式化した.
  • 齋藤 雅彦, 倉本 拓哉, 中川 啓
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_49-I_54
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     地質学的に同一とみなされる帯水層内においても,飽和透水係数等の物性値は空間的なばらつきを有する.これにより,流速分布にもばらつきが生じ,局所的に流速の大きな部分(いわゆる水みち)が存在する可能性がある.しかしながら,これらを現場観測等により精度よく把握することは事実上不可能であり,通常の地下水・浸透流に関するシミュレーションではこのような不均一性は無視されている.本研究では,単純な矩形領域を対象に,透水係数の空間分布モデルを用いて数値シミュレーションを行い,透水係数のばらつきの大きさ,空間解像度および解析領域のアスペクト比の違いが流速分布の統計的性質に与える影響について考察した.その結果,これらの関係は比較的簡易な数式で近似可能であり,また解像度を上げることによって局所的な水みちが表現されることを示した.
  • 井上 一哉, 藤白 沙都, 田中 勉
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_55-I_60
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     本研究では,汚染物質が揚水井に流入する領域を集粒域と定義して,空間相関性を有する複数の透水係数分布に対する移流分散挙動をランダムウォーク粒子追跡法により解析し,集粒域の三次元確率空間分布を時系列で推定する方法を考案した.揚水井への粒子到達とトラベルタイムの算定,任意幅のアンサンブル格子の導入,既定時間内に集粒域になる格子確率の導出から構成されるアルゴリズムについて言及した.不均質性の異なる場に対して,三次元集粒域の時系列結果を提示するとともに,確率0.5以上の格子から成る三次元集粒域の体積は不均質度に依存せず,揚水量に依存することを示した.また,各格子の確率をエントロピーと関連付けて,不均質度の増加は非ゼロ確率から成る三次元集粒域の体積増加につながる点を定量評価した.
  • 福永 翔太, 田内 裕人, 江種 伸之, 平田 健正, 川本 克也
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_61-I_66
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     本研究では原位置バイオレメディエーションの効果を検証するため,還元条件下での揮発性有機化合物(VOCs)の分解を対象に,数値解析により各物質の一次反応速度定数を算出した.対象地は,地下水から環境基準を超える塩素化エチレン類,塩素化エタン類,塩素化メタン類,およびベンゼンといった多種類のVOCsが検出された廃棄物不法投棄現場である.ここでは,飽和帯の浄化対策として嫌気分解と生物学的脱塩素化を利用した原位置バイオレメディエーションが適用された.数値解析の結果,VOCsでは基準とした塩素化エチレン類の自然減衰速度の最大40倍,DCMとベンゼンでもそれぞれ最大17倍,15倍の分解促進効果があることが明らかになった.この結果,還元条件下における原位置バイオレメディエーションがDCMとベンゼンに対しても有効な手法になり得ることが示された.
  • 松浦 拓哉, 手計 太一, 北 隆平, 溝口 敏明
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_67-I_72
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     黒部川扇状地の地下環境を解明する目的で,放射性同位体,溶存イオン,透水係数を用いて地下水の滞留時間と涵養域の推定を行った.溶存イオン10項目を用いて主成分分析を行った結果,下流域もしくは中流域の黒部川が涵養域であると推定された.黒部川扇状地のトリチウム濃度は3.0 TUから4.3 TUであった.その結果,黒部川扇状地に位置する87 m以浅の地下水の滞留時間は35年から39年であることがわかった.これは,透水係数を用いた滞留時間の解析と同様な結果となった.また,得られた滞留時間を用いて涵養域を推定した結果,河口から13.4 kmから26.4 kmの区間であることがわかった.これは,扇頂部に位置する愛本堰堤から中流部に位置する黒薙の区間にあたる.
  • 天野 弘基, 中川 啓
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_73-I_78
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     長崎県島原市における地下水水質分析データをもとに,詳細な水質形成機構について検討した.その結果,森林部の地下水は降雨,農地や市街地の地下水は水と岩石の相互作用が,卓越した水質形成機構として働いていた.液相中のCa2+,Mg2+と固相上のNa+,K+との間にイオン交換が起きていることが,CAIとNa+/Cl-の両方の指標から示された.総陽イオン(TZ+)/(Na++K+)および(TZ+)/(Ca2++Mg2+),Ca2+/Mg2+は,アルカリ長石よりカルシウムやマグネシウムに富む角閃石や黒雲母,斜長石,カルサイト,ドロマイトが溶解していることを示した.イオン交換および鉱物の溶解は,Durov diagramからも示された.
  • Qian ZHOU, Naota HANASAKI, Jun'ya TAKAKURA, Shinichiro FUJIMORI, Kiyos ...
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_79-I_84
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     Due to global warming, it is concerned that cooling water for thermoelectric generation would be run short more frequently in many places of the world. We used a Computable General Equilibrium (CGE) model to quantify the socio-economic impact of a hypothetical shock of capital productivity, which represents shortage of cooling water on thermal power generation plants. The result showed that the magnitude of electricity generation change and subsequent economic indicators change due to 1% capital productivity reduction were varied by region. The mean electricity generation loss was largest in Southeast Asia and smallest in North Africa when an identical shock was given to all regions throughout the simulation period. Considerable regional differences in GDP and electricity price were attributed to not only the capital productivity, but also the amount of capital in thermoelectric sector and its contribution for GDP. Additionally, thermoelectric sector shock propagates into the global economy. These finding demonstrate the significance in quantifying the economic consequence of cooling water shortage.
  • Muhammad Hasnain ASLAM, Kei YOSHIMURA
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_85-I_90
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     Mangla reservoir is reducing its storage capacity due to sedimentation. The sedimentation rate may increase in future due to climate change. This study will provide the changes in sediment yield in Mangla watershed caused by climate and land use changes in future. The areas of watershed under high annual soil loss have identified using Universal Soil Loss Equation (USLE). Adapting proper land use types, it will be possible to reduce the soil loss and hence reduce the sediment load into the reservoir.
     Estimations with CMIP5 rcp 4.5 climate scenario gave 12% increase in average annual sediment yield in late 21st century. Similarly, the increase in sediment yield due to future land use change arisen by expansion in urban and agricultural lands is 5% of that in present. Future sediment yield can be effectively reduced by 21% by transforming mosaic vegetation above 2000m and bare areas above 3000m elevation to forests. Contour cropping conservation practice for agricultural lands has found effective in reducing 4 to 5 percent of sediment yield in near future. These adaptation measures will help in enhancing the useful life of the reservoir by 31 years.
  • Cho Thanda NYUNT, Yoshihisa KAWAHARA
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_91-I_96
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     Climate change alters the hydrological cycle in river basins and threaten the future surface water resources under the stress of the rapid urbanization and population growth in many cities. Haji Dam, located upstream of the Gono River in Chugoku region in Japan, is a very important green energy resource for urban water supply, hydropower generation, irrigation and flood controls. Therefore, the assessment of the projected inflow and capacity under present operating rule is very important for the multi-purpose reservoir. As a result, the estimated maximum 100-year probable rainfall will surplus at least 5 % in the whole river basin as well as the approximately 35 -60 mm surcharge in July and +5 to +20 mm extra in September will fall east, west and middle of the basin in near future. Finally, the increasing trend is significant with 50 m3/sec/year in the annual basic and around 100 to 150 m3/sec/month during the wet season. It requires to change the release ratio before and during the flood if the current flood control allocation wants to keep constant and reservoir water level continuously retains under the flood alarm level for reservoir safety. Moreover, the present operating rule assures the enough capacity after flood season or from September for multi-purposes.
  • Lap Quoc TRAN, Kenji TANIGUCHI
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_97-I_102
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     The tropical cyclones that make landfall in the coastal areas of Vietnam cause increasing economic losses, with an average of six landfalls per year leading to approximately VND 12,500 billion in damages. It is assumed that the losses are mainly due to socio-economic developments, i.e. growing wealth and greater settlement of exposed areas. However, it is also thought that the rise in damages is caused by increasing frequency of severe cyclones resulting from climate change. In this paper, we estimate the impact of socioeconomic and global warming on the tropical cyclones losses. We investigate the historical impact functions of storm damage by using the Ordinary Least Squares estimator and regress damages on tropical cyclone characteristics. Based on simulation results of Typhoon Lekima in 2007 under global warming, socioeconomic development scenarios SSPs (Shared Socioeconomic reference Pathways) and the population density of Vietnam, we estimate the impact of climate and socioeconomic changes on tropical cyclone losses in the end of 21st century. Economic losses caused by typhoon will change under global warming at landfall. Socioeconomic changes will increase losses by approximately three and sixteen times greater than that due to climate-induced changes corresponding to SSP3 and SSP5 scenarios.
  • Alvin C.G. VARQUEZ, Nisrina DARMANTO, Natsumi KAWANO, Shun TAKAKUWA, M ...
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_103-I_108
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     Despite increasing utilization and accuracy of models to predict the future climate and hydrology at higher resolutions, urban areas are still underrepresented. A method to determining future distribution of urban parameters in accordance with the global climate and socio-ecoonomic pathways of the future is proposed. An urban growth model was used to project the expansion of urban areas in 2050 of Jakarta. From shared socio-economic pathways (SSP), total population in the future was acquired. Using historical population distribution data, spatial distribution of population was projected until the year 2050. From empirical relationships acquired from population with nighttime lights adjustment, actual urban parameters, and GDP, futuristic urban parameters were calculated. Finally, the calculated future distribution of urban parameters was used in downscaling the future climate of Jakarta using the pseudo-global warming method.
  • Sameh KANTOUSH, Doan Van BINH, Tetsuya SUMI, La Vinh TRUNG
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_109-I_114
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     Between 2015 and 2016, Vietnamese Mekong Delta (VMD) has undergone the most severe drought event over the last 90 years, causing damages to agriculture, aquaculture, and fresh water suply. Moreover, upstream Mekong River development by constructing hydropower dams will magnify the severity to the region. This research therefore aims at summarizing some damaged information caused by drought event 2015-2016 and analyzing the impacts of eleven proposed mainstream dams in Thailand, Lao PDR, and Cambodia on hydrology of Vietnamese Mekong Delta under the effect of sea level rise. Results show that the flow discharge is reduced by maximum 14.9% whereas the maximum increase in water level exceeds 220%. This leads to more intrusion of saltwater into the delta and reduction of fine sediment and natural nutrients settling in floodplains.
  • 丸谷 靖幸, 渡部 哲史, 田中 智大, 立川 康人
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_115-I_120
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     本研究は,観測データの乏しい流域において気候変動影響評価研究を行うことを目標とし,再解析データを用いた準観測データの統計的作成手法の検討を行った.再解析データは観測値を基にデータ同化されているが,降水量に関しては直接同化されておらず,他の物理量と比較し観測値との間にバイアスが存在する.そこで本論文では降水量に着目し,手法の適用だけではなく適用範囲の検証も行った.その結果,再解析データの月降水量と観測値の降水回数,平均値,標準偏差の関係を利用することで,再解析データが観測値と同程度の降水パターンを再現出来ることが分かった.さらに,データの長期トレンドの有無に関わらず,較正期間に構築した手法により,検証期間の再解析データも良好に補正出来る可能性が示唆された.
  • 渡部 哲史, 鼎 信次郎, 平林 由希子
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_121-I_126
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     クオンタイルマッピング法は広く気候モデル出力値の補正に用いられているが,補正の際に正しい値とみなす参照データの選択や補正を行う期間の設定により,補正結果が大きく異なる可能性がある.本研究はそれらの差異ついて,複数の初期値アンサンブル実験結果が利用可能な気候モデルの出力値を用いて定量的に評価した.初期値アンサンブルの選択により,30年間における日降水量上位1%タイル値に関して,参照データ比で20から30%程度の差が生じること,同じ2070年1月の月平均日気温が,2070から2100年を期間とした場合と2041から2070年を期間とした場合により,補正結果が全球平均で0.3から0.5K程度異なることが明らかとなった.クオンタイルマッピング法を適用する差にこれらの問題を考慮することの重要性が示された.
  • 吉野 純, 林 光太郎, 小林 智尚
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_127-I_132
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     本研究では,高解像度な地域気候モデルを用いて擬似温暖化実験(全球気候モデルHadCM3のうちSRES A1Bシナリオの2090年代を想定)を行い,岐阜県・愛知県における集中豪雨に関する将来変化について定量化した.全体的に年最大日降水量に関しては1.5~2倍程度の増加傾向に,また,日降水量100mm以上年間日数に関しては1.0日程度の増加傾向にあった.ただし,岐阜県中央部の山間部ではこれらの将来変化は相対的に小さく,集中豪雨に対する温暖化影響には地域差が認められた.将来気候では,より風上側にあたる岐阜県南部・愛知県の平野部において積乱雲活動が活発となり,岐阜県中央部の山間部への下層における水蒸気流入が阻害される可能性が示唆された.
  • 中北 英一, 森元 啓太朗, 峠 嘉哉
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_133-I_138
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     近年我が国では豪雨災害が頻発しており,温暖化の影響が指摘されている.特に都市域ではゲリラ豪雨による鉄砲水などの被害が報告されるが,温暖化に伴うその生起頻度の変化は明らかでない.
     本研究では,5km解像度領域気候モデル(RCM5)の出力を用いて,近畿地方周辺で8月に生起するゲリラ豪雨の生起頻度の将来変化の推定を試みた.まずXRAINによるレーダ降雨情報の平滑化により,RCM5の解像度(5kmメッシュ・30分ごと)で滑らかに表現されるゲリラ豪雨の降雨分布を確認した.RCM5出力の解析では,「晴天日」と「降水システム日」を客観的に分類し除外したうえで,残りの日の降雨分布から,ゲリラ豪雨に対応する降水セルを目視で抽出した.基準を満たす降水セルが抽出される「ゲリラ豪雨発生日」の日数の将来変化を調べた結果,8月で,特にその下旬において有意な増加がみられた.8月下旬における増加には,「降水システム日」の減少が寄与している可能性が示唆された.
  • 秋間 将宏, 風間 聡, 峠 嘉哉, 小森 大輔, 川越 清樹, 多田 毅
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_139-I_144
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     洪水・高潮・斜面崩壊複合災害の潜在被害額分布を定量的に評価した.複合災害の外力としての日降水量と潮位偏差は過去の年最小気圧との負の相関関係から統計的に算出された.その日降水量と潮位偏差を用いて現在気候下における洪水・高潮浸水被害額と斜面崩壊被害額を算出し,両者の和を複合災害被害額とした.次に,複数のGCM出力の気圧値を用いて将来変動を予測し,将来の複合災害潜在被害額も推定した.結果として,現在における再現期間50年の複合災害の潜在被害額は107兆円と推定された.将来推定の結果,現在に比べ潜在被害額が減少する気候シナリオの組み合わせも存在するものの,平均的な複合災害潜在被害額は2050年期にかけて1.07倍,2100年期にかけて1.08倍に増加する事が示された.
  • 田中 岳
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_145-I_150
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     降雨量を流出量に変換する系は,様々な形式の微分方程式で記述される.降雨現象が確率過程に属するならば,この微分方程式は確率微分方程式と解釈される.
     本論文では,最も簡単な形の貯留型流出モデルを用いて,降雨強度,貯留係数,初期流出高の全てが既知の確率過程に属するとした条件の下で,流出高の確率特性を推定する手法を提案する.はじめに,時間変化する流出高の平均値周りの1から4次モーメントを与える微分方程式を導出する.この提案式の妥当性はシミュレーション法に基づき評価する.更に,この提案式を解くことで流出高の確率密度関数の時間変化が推定可能となる.
  • Khai Lin CHONG, Takahiro SAYAMA, Kaoru TAKARA, Ismail ABUSTAN
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_151-I_156
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     Time of concentration Tc is defined as the wave travel time from the most hydraulically remote point to the point of study. Tc is an important element in hydrological studies, especially in drainage system designs and the estimations of flood arrival time. The common approach in the estimation of Tc is based on Kinematic Wave (KW) approximation for both overland flow and river routing. This approximation, however, may not be appropriate on a flood plain with inundations. The main objective of this study is to propose the estimation of Tc with Diffusive Wave (DW) approximation considering the effect of flood inundation. The proposed method is demonstrated in the Kelantan River basin, Malaysia, focusing on a severe flood event in December 2014. This study compares the estimated Tc with other estimations based a Rainfall-Runoff-Inundation simulation and with a simple correlation method between rainfall amount in different durations and peak river discharges. In consequence, the proposed method with DW approximation with flood inundation showed closer estimations of Tc by the other two methods.
  • 齋田 倫範, 安達 貴浩, 小橋 乃子
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_157-I_162
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     川内川流域では,平成18年7月に活発化した梅雨前線による記録的な大雨によって甚大な被害が生じた.その際,鹿児島県さつま町の宮之城水文観測所では,7月22日の10:00から11:00の1時間に1.94mという急激な水位上昇が生じていた.このような水位上昇が生じた原因を明らかにするために,本研究では,山地降雨流出解析モデルを構築し,降雨の時空間分布が水位上昇に及ぼす影響を調べた.その結果,宮之城周辺における激しい降雨が宮之城での急激な水位上昇の主因であるが,前日の先行降雨を経た後の小康状態から激しい降雨への短時間での移行,さらにはその後の比較的強い雨の継続という時間変化も影響を及ぼしていることが示唆された.
  • Karlina, Takahiro SAYAMA, Kaoru TAKARA
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_163-I_168
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     Since hydrologic drought is a slowly developing phenomenon, it may be possible to forecast low flow conditions, especially in areas with long dry seasons. This study proposes hydrological drought forecasting methods based on two stream flow recession analyses. The first one is based on a recursive digital filters for baseflow separation and recession characterization for the baseflow forecasting. The second one is based on the theory of “simple dynamical systems of catchments”. The applications of the two methods were demonstrated in Lombok Island in Indonesia and showed that the latter method, which reflects more flexible recession characteristics showed better accuracy in the estimations of the low flows. Nevertheless, both of the presented applications showed underestimations in low flow forecastings compared to the observed ones. The underestimations were mainly associated with the ignorance of the rainfall, especially for long lead time cases.
  • Han XUE, Takahiro SAYAMA, Kaoru TAKARA, Bin HE, Weili DUAN
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_169-I_174
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     Non-point source pollution contribution is one of the major causes of water quality degradation in Chinese rivers and lakes. This research proposes a non-point source pollution modelling based on hydrograph separation by a distributed hydrological model and Time-Space Accounting Scheme. This method simulates spatially exported non-point source pollution nutrient loads by estimating flow discharge contribution rates from different spatial zones and source runoff concentrations of nutrients for each spatial zone. The source runoff concentrations can be estimated by field measurement or an inverse approach based on multiple stream flow samples. The proposed method was applied at the Pingqiao River Basin for a storm event. The inversely estimated source runoff concentrations showed satisfactory agreement with field measurement in the upstream area. The analysis suggested that this area (22.3 km2) exported about 2,630 kg of total nitrogen during an investigated storm event, and the urban area (5.3% of total area) contributed 18.5% of total nitrogen and 80.1% of ammonia nitrogen. The estimated source runoff concentrations were further applied for one-year simulation (2014/12/1 ~ 2015/11/30), which estimated 102,600 kg of total nitrogen export. The result was compared with the estimation based on measured source runoff concentrations (79,000 kg of total nitrogen) and revealed that the inverse method showed about 30% overestimation.
  • 池嶋 大樹, 山崎 大, 鼎 信次郎
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_175-I_180
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     本研究ではSWOT衛星の擬似観測を全球河川モデルCaMa-FloodにLETKFでデータ同化する仮想実験を,アマゾン川流域全体を対象に行なった.水面標高の疑似観測を同化することで,陸面流出量に誤差を含んだシミュレーションに関しても地表水動態の再現精度を向上できた.比較的小さな大陸河川を対象とした既往研究とは異なり大河川の流域全体が対象のデータ同化では,上流の補正効果が下流へ伝搬するため,上流からの流入量が大きな地点では擬似観測が無い時でも河川流量の再現精度が大幅に向上した.局所的な陸面流出量に対し,上流からの河川流量が大きい地点では局所的な観測で補正できず,上流からの補正効果の伝搬で補正が達成された.このように,データ同化は大流域河川においても地表水動態の時空間変動推定の高度化に有効であると示された.
  • 谷口 健司, 渋尾 欣弘, 吉村 耕平
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_181-I_186
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     地球温暖化に伴う大雨の頻度増加や台風の強大化が懸念されるなか,治水におけるソフト対策の検討に際して,発生し得る最大クラス洪水の想定が重要となっている.本研究では,神奈川県を流れる一級河川鶴見川を対象とし,温暖化予測結果を用いた擬似温暖化手法とアンサンブルシミュレーションを組み合わせた数値気象シミュレーションを行い,既往の大雨事例を基にした将来気候における大雨の推定を行った.さらに,分布型流出モデルによる流出解析より気候変化に伴う河川流量の変化について検討を行った.気象シミュレーションにおいては流域内の総降水量,最大時間降水量ともに顕著な増加がみられた.流出解析では再現シミュレーションでは計画高水流量を下回ったが,将来気候においては多くの場合で計画降水流量を上回る規模の洪水がみられた.
  • 西岡 誠悟, 小林 健一郎, 奥 勇一郎, 江種 伸之, 田内 裕人
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_187-I_192
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     和歌山県新宮川流域は,台風の紀伊半島接近に伴い,近年豪雨により浸水被害,土砂被害を被っている.地球温暖化による気候変動でこれらの豪雨の規模が大きくなる恐れがあり,将来的な被害対策を講じることが喫緊の課題である.本論文では,課題検討の一助となるように,平成24年台風4号を対象として,気象解析モデルであるWRFを用いて,まずNCEPによる客観解析データを境界値として,対象台風の積算降雨分布の再現実験を行っている.また気候変動リスク情報創生プログラムでのAGCMによる計算結果を用いて,擬似温暖化実験を実施し,台風中心気圧や積算降雨の変化について再現実験との比較を行い,計算降雨を入力値として崩土発生リスクの増加について考察している.崩土発生リスクついては,タンクモデルにより求められた土壌雨量指数と時間降雨を用いて評価する.
  • 牛山 朋來, 佐山 敬洋, 岩見 洋一
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_193-I_198
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     近年の領域アンサンブル予報技術の著しい進歩は,豪雨や洪水を長いリードタイムで予測できる可能性を秘めている.そこで,アンサンブル洪水予測システムを開発し,予測可能性を調べた.大気部分は,アンサンブルカルマンフィルターを用いて領域アンサンブル予報を行ない,水文部分は降雨流出氾濫(RRI)モデルを用いた.このシステムを2015年の鬼怒川洪水に適用し,洪水の予測可能性を調べた.アンサンブル洪水予測の結果,リードタイムが21~15時間の場合は,洪水による流出ピークを定量的に予測することができた.一方,リードタイムが33~27時間の場合は,確率は低いものの,洪水流出発生の可能性を予測することができた.アンサンブル予測は,いずれの場合も気象庁の現業メソモデル(MSM)を用いた場合よりも優れていた.以上の結果,アンサンブル予測の高い潜在能力と限界が明らかになった.
  • Dzung NGUYEN-LE, Tomohito J. YAMADA
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_199-I_204
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     When tropical cyclone (TC) 201610, namely Lionrock, was moving over the western North Pacific from southeast of Honshu to cut across the Tohoku region during 29-30 August 2016, continuous and intense rainfall occurred in mid- to southeastern Hokkaido, far from the TC center. The Weather Research and Forecast (WRF) model is used to investigate the possible remote effect of TC Lionrock on this heavy rain in Hokkaido. The National Center for Environmental Prediction (NCEP) global final (FNL) analysis is used to provide both the initial and lateral boundary conditions for the model. Three numerical experiments are performed. In the control experiment (CTL), the original FNL is used. In the no-TC experiment (NoTC), the vortex associated with TC Lionrock in the FNL is removed such that the TC signal does not appear at the initial time. In the no-topography experiment (noTopo), the terrain height over Hokkaido set to 1 m if it is higher than 1 m. As verified against observations, the CTL and noTopo experiments capture reasonably well the TC track. The CTL experiment also reproduces relatively well the spatial distribution and temporal evolution of rainfall, whereas the remote rainfall in Hokkaido is largely suppressed in the noTC experiment, suggesting a significant far-reaching effect of TC Lionrock. The combined effect of Lionrock and the stationary low-pressure system located over the Sea of Japan enhances the moisture transport towards Hokkaido through their outer circulation. Particularly, only very small amount of rainfall is observed in Hokkaido in the noTopo experiment, indicating that the orographic forcing of the southeastern mountains in Hokkaido plays the most critical role in this extreme rainfall event.
  • 北 真人, 河原 能久, Cho Thanda NYUNT
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_205-I_210
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     本研究では2014年8月広島豪雨を対象として,WRFモデルを用いたX-band MPレーダーデータの3次元変分法による同化実験を実施した.その結果,1時間雨量分布や累積雨量分布・量に関して,同化を行わない予測より良好な結果を得た.また,スレットスコアによる評価を行った結果,同化した場合において予測初期のスコアの改善が見られた.データ同化の効果として,動径風による下層・中層の風速場の修正や反射強度による水蒸気場の修正により降雨が発生しやすい環境が形成されたことを確認するとともに,それらにより降水セルの位置や強度に関する再現性の向上に繋がったことを示唆した.このことから,データ同化の効果が有効となる時間は限られるが,X-band MPレーダーによる観測値が本研究で対象とした局地的豪雨の予測において有用となることを示した.
  • 山口 弘誠, 古田 康平, 中北 英一
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_211-I_216
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     メソ対流系の線状降水帯に対する数時間先の降水予測精度向上を目的にデータ同化実験を行った.データ同化システムはCReSS-LETKFを用いて,XRAINで観測されるドップラー風速,レーダー反射強度,および固体降水混合比をそれぞれ同化した.メソ対流系維持の予測を目的とした実験では,データ同化することで1時間先まで降水予測精度向上が見られ,固体降水を含めた全ての観測値を同化した実験が最も精度が高いことを示した.メソ対流系発生の予測を目的とした実験では,固体降水の同化による降水予測精度への効果はほとんどなかったが,気温低下を引き起こすという狙いを達成することができた.コンポジット解析により大気中下層における気温低下が本事例における発生要因であったことを確からしく示した.
  • 米勢 嘉智, 河村 明, 天口 英雄, 戸野塚 章宏
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_217-I_222
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     本論文では,神田川上流域を対象としてXバンドMPレーダ雨量と地上雨量観測所1分値データを用いた時空間相関特性解析を実施するとともに,移流モデルによる雨域移動特性を分析し,雨域移動特性と時空間相関特性の関係性を明らかにした.台風性降雨など特定方向への雨域移動がみられる場合,地上観測所雨量とXバンドMPレーダ雨量との相関性の高いエリアは,雨域移動に伴った時空間的な移動が確認できた.また,大気状態不安定による降雨の場合は,相関性の高いエリアには特定の時空間的な移動傾向が現れず,観測所直上メッシュよりも周辺メッシュにおける相関性が高くなることを示した.
  • 東 俊孝, 片山 勝之, 中北 英一
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_223-I_228
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     ゲリラ豪雨と呼ばれる局地的豪雨が,首都圏で頻発している.道路交通管理の側面からも,災害リスクの事前回避に向けた先読み情報のニーズは高い.一方,長寿命で局地的豪雨をもたらすマルチセル型ストームは古くから注目されているものの,偏波レーダによる早期探知は未踏領域となっていた.そこで,本研究では京都大学防災研究所で開発されたゲリラ豪雨の早期探知の理論を土台とし,国土交通省により現業化されている高分解能偏波ドップラーレーダ網(XRAIN)を用いて,マルチセル型ストームの早期探知を試みた.その結果,XRAINの3次元観測値に基づく新たな理論は,東京都心周辺における冠水危険の予測可能性を示した.
  • 伊藤 佑果, 直原 悠紀子, 大石 哲, 中北 英一
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_229-I_234
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     代表的な短時間降雨予測モデルの一つである移流モデルは,モデルのパラメータ制限や考慮する過去のデータ数の違いなどの複数パターンの予測を行うことができる.また,予測される降雨の動きや発達・衰弱は,モデルのパラメータを要素とする行列の固有値によって特徴づけられている.本研究では,短時間降雨予測のさらなる高度化を図るため,高時間分解能を持つ気象レーダーと移流モデルを用いて,パラメータやデータ数パターンの選別方法について検討を行った.その結果,各パターンにおいて予測精度が良い条件が明らかになり,行列の固有値は降雨の特徴に対応するとともに,予測パターン選択の指標となり得る可能性を示した.
  • 林 義晃, 手計 太一, 橋本 彰博
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_235-I_240
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     本研究では,XバンドMPレーダ(X-MP)の定量観測範囲内である手取川流域において,様々な解析手法を用いて地上雨量,Cバンドレーダ,X-MPの雨量データによる面積雨量のデータ特性を検討した.
     その結果,4パターン,16降水イベントによる地上雨量データの面積雨量を解析した結果,時間降水量で最大約2(mm/h),日降水量で最大約13(mm/day)の違いが生じた.X-MPの面積雨量は,地上雨量及びCバンドレーダの面積雨量と比べて小さくなる傾向であり,地上雨量及びC バンドレーダの面積雨量からX-MPの面積雨量を差分した値とX-MPのデータ欠測率との間には,有意な関係性は見られなかった.
  • 武川 晋也, 井芹 慶彦, 鼎 信次郎
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_241-I_246
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     台風による豪雨は洪水や土砂災害を引き起こし,社会に甚大な被害をもたらしうる.しかし,台風の経路データは発生位置,途中ルート,消滅位置などからなる多変量なデータであるため,豪雨と台風経路の特徴との関係を把握することは難しい.本研究では,1951-2014年までに北西太平洋で観測された台風をパターン抽出に適した自己組織化マップを用いて20の経路パターン(ノード)に分類し,日本の各地域から選択された10の観測地点を対象にそれぞれの地点での台風のノード別の降水量の割合を計算し,さらに日降水量の上位3事例を抽出して台風のノードや前線といった豪雨の要因を調べた.その結果豪雨の要因として,特定のノードと前線が組み合わさったものや前線のみのものなど,地点ごとに豪雨と台風の経路パターンとの関係が大きく異なることが明らかになった.
  • 本田 尚正
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_247-I_252
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     本研究では,土石流発生基準としての実効雨量における半減期の設定に関して検討を行った.検討対象は鹿児島県大隅地方,長野県南木曽町,広島県広島市でそれぞれ発生した土石流災害であり,各災害の雨量指標R'(長期実効雨量と短期実効雨量を組合せた降雨履歴の指標)を計算した.その結果,実効雨量の算定に必要な半減期の設定に地質の違いを考慮することにより,R'の値に約20%の増減が生じた.ただし,火山灰のように長期の半減期が12時間以下の地質ではこの限りではなく,注意を要する.このことから,降雨履歴の指標に地質情報を加味することにより,土石流発生の予測精度の向上が期待される.
  • 下妻 達也, 瀬戸 心太
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_253-I_258
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     二周波降水レーダ(DPR)を搭載したGPM主衛星が2014年3月より運用されている.DPRはKuPR,KaPRと呼ばれる2つのレーダから構成されており,熱帯降雨観測衛星(TRMM)に搭載されていたPR降水レーダよりも高精度な観測が可能であるが,人工衛星に搭載された二周波降水レーダによる降水観測は初の試みであるため,観測結果について十分な評価が必要である.本研究では,地上レーダによる観測として国土交通省の運用するXバンドMPレーダ雨量観測(XRAIN)に着目し,DPRの降水強度の評価を行うことを目的として降水強度の比較を行った.また,比較結果より両者の降水強度の違いについてDPRアルゴリズム上の要因を考察した.
  • 八木 柊一朗, 鈴木 善晴, 横山 一博
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_259-I_264
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     本研究では,強冷法シーディングによる豪雨に対する降水抑制の有効性および信頼性を評価するため,積雲発生初期における面的・離散的・動的シーディングに関する実験的な数値シミュレーションを行い,条件や手法の違いによる抑制効果と促進リスクの有無や大小について検討を行った.その結果,従来の面的シーディングによる氷晶核数濃度の操作倍率が大きい大規模なシーディングではなく,操作倍率が小さく実施領域が限定された比較的小規模な(離散的・動的)シーディングであっても一定の降水抑制効果が得られる可能性があることが示唆された.また,抑制メカニズムの解析を行った結果,線状降水系の事例ではシーディングによって鉛直風速の弱化が降水抑制に繋がることや,降水促進リスクが他の事例より小さい傾向にあることが確認された.
  • 松原 隆之, 高田 望, 中北 英一
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_265-I_270
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     近年の異常な降雨・出水の頻発を受け,治水機能を有さない発電ダムも貴重な防災資産として洪水調節機能が求められるようになった.発電ダムで洪水調節機能を付加するには,信頼性の高い予測が必要となり,熊野川流域の発電ダムでは,気象庁GSMを活用した洪水被害軽減対策を実施している.気象庁GSMは,予測リードタイムが長く,早期に洪水の発生を予測できるが,予測精度が必ずしも高くなく,過小予測の場合も多い.本研究では,更なるダム運用の高度化に向けて,気象庁の週間アンサンブル予報のアンサンブルメンバ間のばらつきや気象庁GSMの空間的ばらつきを評価することで,気象庁GSMによる流域雨量の過小予測傾向を事前に把握し補正する手法を考案し,実運用への適用性を評価した.
  • 津田 守正, 入江 政安, 岩見 洋一
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_271-I_276
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     河川管理における渇水時の貯水池運用や,長期的な水資源計画等において,上水道の給水制限時の日使用水量を用途別に推計し,給水制限による使用水量抑制効果や,季節変動の経年変化を考慮することが重要になってきている.これまで,著者らが提案していた,月単位の用途別使用水量の時間的配分による用途別日使用水量の推計手法は,降雨の有無や曜日等の影響による日変動を考慮できなかった.本検討においては,推計のために用途別月使用水量に加えて合計日使用水量を用いることで,日変動を考慮できる多変量時系列を対象とした時間的配分手法を適用した.各手法を愛媛県松山市に適用し,日変動を考慮する必要や,日使用水量や月使用水量の実績値との整合を保つ必要性等,推計値の用途に応じて手法が使い分けられることを示した.
  • 宮本 守, 牛山 朋來, 岩見 洋一, 小池 俊雄
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_277-I_282
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     気候変動影響による洪水氾濫形態の将来変化を明らかにすることを目的としてフィリピンのパンパンガ川流域を対象に時空間的な洪水氾濫特性を分析した.氾濫解析にはRRIモデルを適用し,降雨はMRI-AGCM3.2SのRCP8.5シナリオの結果を領域気象モデルにより5kmにダウンスケーリングし地上雨量で出現頻度をバイアス補正した.その結果,将来気候では浸水面積が約1.2倍に増大するが平均浸水時間は短くなることがわかった.これは浸水面積が増大したことで湛水が早く解消するグリッドが増え,浸水領域全体での平均浸水時間が小さくなったことも一因であるが,将来気候において降雨の時空間的な偏りが大きくなる傾向も考えられるため,浸水面積と浸水時間の両方を考慮した手法で洪水被害リスクの将来変化を評価する必要がある.
  • 平賀 優介, 風間 聡, Chaiwat Ekkawatpanit, 峠 嘉哉
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_283-I_288
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     本研究ではメコン河氾濫原において急激に進行する干拓が,周辺または下流の環境に与える影響を定量的に評価するための初期解析として,まず衛星解析により現状の干拓地を広域で特定する.更に重回帰分析により干拓地が造成され易い地域を特定する.また,現地調査により干拓が氾濫原水質に与える影響を明らかにする.MNDWI,NDVI,NDSIの各正規化指標を用いて,衛星解析による干拓地の抽出を行った.Landsat画像から目視抽出した52地点中,49地点の干拓地,95%を抽出することが出来たが,一部の干拓地では領域の10%程度しか特定出来ていなかった.これは主に目視による干拓地面積の過大評価による.更に干拓地造成の傾向を把握するため,衛星解析による干拓地抽出結果を用いて重回帰分析を行った.対象地域の各コミューン内の干拓地の有無を目的変数,プノンペン中心部からの直線距離,人口,年氾濫期間,年最大水深を説明変数とした結果,重相関係数は0.34であった.また,干拓が氾濫原の水質に与える影響について現地調査を行った.廃棄物の埋め立てが行われる氾濫原では,干拓無しの氾濫原と比較して約25倍の全リン値,下水汚水基準値の約4倍のCODを記録した.埋め立て後工場地として利用される氾濫原では他と比較して鉄の値が非常に大きく,工場地の一つではWHO水質基準値の約21倍を記録した.
  • 佐藤 郁, 小森 大輔
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_289-I_294
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     近年,大河川流域で自然由来の地下水ヒ素汚染が世界的に問題となっている.これまで,地下水中ヒ素に関する研究は数多くされている一方で,地表水に関しての研究は少ない.上下水道普及率が低く,メコン河が毎年氾濫するカンボジアでは,地下水中ヒ素が地表水中に移流し拡散する可能性が推察される.そこで,本研究では地表水中ヒ素濃度推定モデルを構築した.さらに,モデルの精度検証のため数値シミュレーションによる推定濃度と雨季に実施した現地観測で得た濃度を比較をした結果,本モデルは雨季において現地観測結果とほぼ等しいオーダーを得ることを確認できた.また,2015年の数値シミュレーションの結果から,地表水中ヒ素濃度の乾季と雨季の傾向を比較した.雨季では洪水氾濫とともにヒ素が拡散し,雨季後の乾季では洪水氾濫前よりも地表水中ヒ素濃度が増加することが示唆された.
  • 坂本 貴啓, 篠崎 由依, 佐藤 裕和, 白川 直樹
    2017 年 73 巻 4 号 p. I_295-I_300
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
     堤防の除草は,治水安全度に直結する極めて重要な河川管理の一つである.我が国では,河川市民団体が活動の一環として堤防除草に取り組み,河川管理の一端を補強している場合も多いが,その実態解明は十分になされていない.河川管理者と市民団体が効果的に連携するためには,このような活動を網羅的に把握する必要がある.本研究では,全国の河川市民団体を対象とし,堤防除草活動に投入している人数及び時間から活動量を定量指標化する方法を提案し,河川市民団体の活動が河川管理の向上に資するかどうかを検討した.全国207団体を対象にアンケート及び訪問調査によってデータを収集し,提案の指標で活動量を推定した.その結果,市民団体は直轄区間の3.7%程度を除草できる活動量を持つことが判明した.金銭換算すると市民団体は河川管理者の除草経費の約1.6%を補強する活動量を有する.
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