2017 年 73 巻 4 号 p. I_1213-I_1218
河川水温は,河川環境や利水と深く関係する物理量であり,また河川の氾濫は,河道と氾濫原にある水を混合することによって河川水温に影響を及ぼすことが明らかになっている.一方で河川の氾濫によって水深の浅い浸水域が広がることで,水面面積や滞留時間が増加し,大気や土壌と交換される熱量の増加や,水深に応じた下向き放射の吸収量の変化による熱収支の寄与割合の変化がもたらされると考えられる.本研究ではこれらの働きを評価するために,水面面積の変化を考慮して熱収支を解く河川水温モデルを開発した.これと河川流下モデルを結合した計算について,タイの観測所における流量,熱収支や河川水温の再現性を検証した上で,氾濫原考慮の有無によって河川水温がどの程度異なるかを算定した.