2017 年 73 巻 4 号 p. I_1435-I_1440
2015年9月に発生した常総市の鬼怒川洪水氾濫の再現計算を行った.現地では水田や側溝に堆積した大量の土砂が問題になったことから,解析では洪水流の氾濫のみならず,それにともなう土砂の堆積の再現も試みた.さらに,水田地帯の畦畔を有限な高さをもつ直立壁として,水路網をノードとリンクからなる1次元ネットワークとしてモデル化した.解析で得られた最大浸水位は実測の浸水位とよく一致し,越水地点ならびに決壊地点の近傍では地表と側溝にそれぞれ50cmほどの土砂が堆積する結果となった.このような土砂の堆積は水田の作物への直接的な被害になるとともに,側溝に堆積した土砂は水路網の排水機能の著しい低下を起こしたと推測される.