2018 年 74 巻 3 号 p. 44-61
我が国の社会情勢や気象条件が変化するなか,日本総体としての生産性の維持・向上が大きな課題であり,水害による経済的・社会的リスク等を軽減した都市構造再編も考えられ得る対応策の一つである.本研究は,複数河川と内外水の氾濫リスクを想定し,今後の都市構造と浸水リスクとの関係を紐解き,河川行政と都市行政の連携による新たな治水対策の方向性を探ることを目的として,富山市のコンパクトシティ施策を前提とした連携方策について検討した.その結果,連続堤防による完全治水ではなく,守るべき地域による浸水深軽減(河川),立地適正化(都市)が有効な施策となり得ることを確認した.更に,将来の人口分布変化を念頭に置いた効率的な河川施策の実現可能性や,都市施策の適用による被害低減の可能性を示した.