2018 年 74 巻 4 号 p. I_211-I_216
気象外力は,氷河モデルを用いた氷河融解予測の不確実性の一因であるが,その影響についてこれまで統合的に評価されていない.気象外力の不確実性が氷河融解予測へ及ぼす影響を評価するため,気象観測の乏しいアジア高山域の氷河を対象とし,氷河モデルのキャリブレーション方法を改良した.21世紀中盤では,氷河モデルキャリブレーションとGCMのバイアス補正に用いる降水量データの選択による氷河融解量の違いは,GCM間のばらつきによる氷河融解量の違いと同程度になることが分かった.また,これまでGCM出力の気温のばらつきは,GCM出力の降水量のばらつきよりも小さいと想定されていた.しかしながら,GCM出力の気温のばらつきに起因する氷河融解量の違いは,GCM出力の降水量のばらつきに起因するものよりも大きくなる場合が多いことが示された.