抄録
本研究の目的は,分布型水収支モデルを用いて土地利用変化と気候変化が富山県域の水資源量に与えた影響を明らかにすることである.1977年から2014までの7時期の土地利用データ,気象庁メッシュ気候値2000と2010を利用した.モデルの妥当性を評価するために,上流域に水工施設のない黒薙観測所と蓮沼観測所を選択し,河川流量の観測値と解析値を比較した.その結果,概ね観測値を再現できていた.
土地利用変化を考慮した水収支解析の結果,経年的に地下浸透量が減少し,表面流出量が増加する傾向が得られた.これは,水田が減少し,不浸透域の増加が要因であった.気候変化を考慮した水収支解析の結果,降水量の減少に伴い,水資源賦存量が減少することが明らかになった.土地利用変化と気候変化を比較すると,土地利用変化による水資源への影響が極めて大きいことがわかった.