2018 年 74 巻 4 号 p. I_805-I_810
近年の河川流量観測の現場では,安全性・経済性に優れることなどから,動画像処理による流速計測手法が浸透しつある.STIVやLSPIVなどが該当し,何れも河川水表面に発生する波紋を追跡することで表面流速を見積もる.他方で,基礎研究の観点においては,計測手法・数値計算モデルの発展に伴い,開水路乱流における自由水面の挙動に対する理解が急速に進みつつある.その過程で,複数の研究者らにより,水面波紋の流下速度が,重力による波の性質を得て表面流速に対し加速あるいは減速するとの報告がなされている.自由水面が時空間に亘りどのような振る舞いを主とするかは条件に対する変調も含め未解明な点が多いが,特に実河川において自由水面挙動を論じた例はない.そこで本研究では,河岸より撮影された動画像を用いて自由水面挙動について詳細な検討を行い,実河川における水面変動が乱流・波動の両者の性質を有することを示した.また,動画像を用いた表面流計測における波動の影響を評価した結果,場合によっては重大な計測誤差要因になりうることが示唆された.