2018 年 74 巻 5 号 p. I_1321-I_1326
近年,既設ダムの有効活用を推進する観点から事前放流の検討が行われているが,大規模洪水の確実な事前予測(見逃し防止),事前放流後の確実な利水容量の回復(空振り防止),さらに,十分な事前放流時間の確保(関係機関調整・意思決定,放流通知,無効放流の最小化)等の観点で課題が多い.こうした課題を解決するために,ECMWFアンサンブル予測雨量をダム治水操作に活用するための基礎的な検討を行った.ダム操作指標として51メンバーから統計値を複数作成し5日間流域平均累積雨量で評価を行うと,各時刻上位が上限雨量予測指標,総雨量中下位が下限雨量予測指標となることが分かった.約4日前の予測で簡易的な事前放流計算を行うと,上下限を組み合わせることで既存手法の課題を解決しダム治水操作に有効活用できる可能性が示された.