2018 年 74 巻 5 号 p. I_553-I_558
本研究は,黒潮の非蛇行期(2017年)および蛇行期(2018年)における水温の変動特性について,和歌山県田辺湾の湾口部で冬季に観測された水温データに基づいて考察を行ったものである.黒潮の非蛇行期には,紀伊半島西岸沿いを北上する暖水波及の影響が顕著であり,水温の急変が発生する頻度が蛇行期に比べて多い.一方の蛇行期にも暖水が南側から波及するものの,暖水波及の頻度及びその規模が大きく減少し,紀伊半島南端に近い地点での水温変化との相関にも顕著な差のあることが確認された.また,観測期間中に確認された顕著な水温変動が両期間ともに約30日周期で発生しており,別時期の水温計測結果においても同程度の変動周期が確認されていることから,長周期の変動が観測地点の水温変動特性にも関与している可能性が示唆された.