2019 年 75 巻 1 号 p. 100-111
開水路のガス輸送機構の解明は自然河川,水処理施設,水産用水路などの水質保全において,非常に重要である.特にガス輸送速度の信頼性の高い評価モデルの構築が急務である.古くから様々な物理モデルが考案されているが,マクロな計測結果や考察に基づくものがほとんどで,局所的な特性については未解明である.そこで本研究では濃度境界層厚さに関する支配方程式を導くとともに,極小径のDOプローブを用いて開水路で発達するガス濃度境界層厚さの空間分布を実測した.本理論より局所ガス輸送は,時間平均主流速の流下方向勾配と乱流拡散係数の卓越度の2つにコントロールされることを示した.平坦床と急変粗度を有する開水路乱流を対象に,理論式と実験結果を比較し,濃度境界層厚さの形成特性を平均流速場と乱流場による寄与から定量的に説明した.