2019 年 75 巻 2 号 p. I_1399-I_1404
平成28年8月十勝川大洪水では,計画規模に匹敵する大流量が流下したにも関わらず,丘陵堤が整備されていた下流部で目立った堤防被害は生じなかった.このことは,丘陵堤が軟弱地盤対策だけでなく,浸透に対しても高い安定性を有していると考えられる.
本研究では,十勝川下流部を対象とし,洪水及び地震災害履歴と堤防整備の経緯を整理し,丘陵堤の土質・構造を把握する.そして,堤防前面の水位ハイドログラフと堤防断面形状,平均透水係数を用いて,堤防の浸透破壊に対する無次元力学指標である堤防脆弱性指標の縦断分布を算定する.これより,十勝川平成28年8月大洪水で丘陵堤整備箇所が浸透破壊を引き起こさなかった理由を明らかにし,幅広で緩傾斜の丘陵堤が,計画規模洪水の浸透被害軽減に対しても有効であることを実証した.これにより,今後の堤防設計の方向性を示している.