2019 年 75 巻 2 号 p. I_253-I_258
多くの水文モデルは温帯地域で開発され,温帯地域の降雨流出機構を想定したモデル構造が主流である.一方,湿潤熱帯地域の厚い土層の影響を考慮した長期間の降雨流出機構とモデリングは十分に研究されていない.本研究は,湿潤熱帯地域の降雨流出現象に適したモデル構造と設定を明らかにすると共に衛星観測雨量と全球データから推定された蒸発散データを用いて,データが限られたスマトラ島バタンハリ川流域での降雨流出現象と洪水氾濫現象の予測可能性を明らかにする.深い土層への鉛直浸透過程と地下水をRRIモデルに反映することにより,温帯地域の流出過程を想定した元のモデルと比較して,長期の河川流量の再現性が改善された.さらに,バタンハリ川下流域では毎年80%以上の確率で50cm以上の氾濫が発生する洪水常襲地帯があることが分かった.