2019 年 75 巻 2 号 p. I_265-I_270
蒸発散量や土壌水分量のグローバルな推計に、サブグリッドスケールの飽和側方流が影響を及ぼすと指摘されているが、これを検証した研究は少ない。そこで本研究では、高解像度地形データを用いたアップスケール手法を全球陸面過程モデルMATSIROに適用し、サブグリッド飽和側方流と鉛直方向の陸面水収支との相互作用を陽に表現するスキームを導入した全球陸域モデルを構築する。50年分の全球計算の結果、スキームの導入で概ね土壌水分量が減少した。これは各グリッド内斜面の谷部に土壌水分が集まり、蒸発や流出が起こりやすくなったためと考えられる。また水分が多い谷部に植生が偏在すると蒸発散など丘谷の水熱収支にコントラストを生じさせるため、飽和側方流の及ぼす影響を評価する上で、地形に加えグリッド内の植生分布についても考慮する必要性が示唆された。