2019 年 75 巻 2 号 p. I_421-I_426
閉鎖性海域における水環境・生態系の保全・再生や気候変動への適応策を検討する上で,集水域からの汚濁負荷流入量とその変動を把握することは重要である.本研究では,瀬戸内海の全集水域を対象とした汚濁負荷流出モデルを構築し,2006~2015年の10年間を対象として再現計算を実施した.一級河川におけるCOD,TN,TP流出量の観測値と計算値の比較を通じてモデルの再現性を確認した後,同期間のTN濃度・流出量の変動傾向について考察した.その結果,21一級水系のほぼ全てにおいてTN濃度の観測値に有意な減少傾向が認められ,本モデルの計算値もその傾向を示した.一方,計算値の流量およびTN流出量は増加傾向を示し,これらの変動傾向には降水量の増加が関与していることが示唆された.