2020 年 76 巻 2 号 p. I_151-I_156
春先の融雪流出を精度良く予測することは利水面,防災面で重要である.融雪流出解析の不確実性の一つに,気温減率がある.本研究では,2つの地域を対象に各年の各月で気温減率を推定することによって,気温減率の季節性,地域性を評価した.さらに,推定した気温減率を用いて信濃川上中流域の大小4つの流域で融雪流出解析を行い,気温減率が解析期間を通じて一定な場合と比較することによって,融雪流出解析において気温減率の季節性を考慮することの重要性を示すことを目的とした.その結果,気温減率には季節性,地域性が存在することを確認できた.融雪流出解析では,推定した気温減率を用いることによって,河川流量の再現性の向上を図ることができた.また,降雪が少ない地域では気温減率が融雪流出解析に及ぼす影響が小さいことが分かった.