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小坂田 ゆかり, 中北 英一
2020 年76 巻2 号 p.
I_1-I_6
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
ジャーナル
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線状対流系事例である 2012年亀岡豪雨に対して,1000mと500m解像度で擬似温暖化実験を行った.空間解像度の違いによる線状対流系表現の違いと将来変化を解析し,その将来変化メカニズムをマルチスケールから解析した.結果,500m解像度で現在・擬似温暖化実験ともに線状対流系が非常に良く表現され,さらに擬似温暖化実験では降雨強度及び総雨量の増加が見られた.その要因として,将来気候では積乱雲内の凝結量が増加し,また積乱雲が発生しやすい対流不安定な場が実現されること(メソγ∼β),複数の積乱雲群による線状対流系構造そのものが強化されること(メソβ),南方から対流不安定な大気が継続して供給されること(メソα)が明らかになった.また,1000m解像度はメソαの将来変化は捉えられる一方で,メソβ以下の変化は十分に捉えられないことを示した.
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小坂田 ゆかり, 中村 葵, 中北 英一
2020 年76 巻2 号 p.
I_7-I_12
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
ジャーナル
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本研究では,5km解像度領域気候モデル(RCM05)を用いて,梅雨豪雨の強雨継続時間と積算雨量の将来変化について統計分析,及び,豪雨の時空間特性を考慮した分類に基づく将来変化特性の詳細分析を行った.まず積算雨量に関する統計分析の結果,現在と将来の梅雨豪雨の母集団は有意にかけ離れている事,また将来は,発生頻度のピークが強雨継続時間の長いほうへシフトする事が示された.さらに,気団の収束域(梅雨前線)と梅雨豪雨事例の強雨域の位置関係に着目して梅雨豪雨を時空間スケールの異なる2つのタイプに分類した.その結果,時空間特性の違いにより強雨継続時間と積算雨量の関係が異なる事が明らかになり,同じ“線状降水帯”であっても異なる時空間特性を持つ現象は区別して扱うことの重要性を示すことができた.
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吉野 純, 杉岡 翔太, 小林 智尚
2020 年76 巻2 号 p.
I_13-I_18
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
ジャーナル
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本研究では,アンサンブル気候予測データベースd4PDFの中の過去気候(3,000年分)と将来気候(5,400年分)の出力から岐阜県における100年確率降水量を超える事例を抽出して,天気図分類に基づき豪雨発生要因の将来変化を評価した.主成分分析とクラスター分析により豪雨発生時の天気図を分類することで,その発生要因を4種類に分類した.岐阜県における豪雨発生パターンは,「タイプA:前線I型(西低東高)」,「タイプB:前線II型(北高南低)」,「タイプC:低気圧I型(西低東高)」,「タイプD:低気圧II型(西高東高)」の4つに分類され,いずれのパターンでも平均日降水量の将来変化は増加する傾向があった.特に,タイプAでは岐阜県の南西に位置する台風の強大化によって,また,タイプDでは直撃する台風の低速化によって平均日降水量がより増大する可能性が示唆された.
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星野 剛, 山田 朋人
2020 年76 巻2 号 p.
I_19-I_24
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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本研究は流域における降雨の空間分布に着目し,降雨量の空間偏差が生じる要因を鉛直風速の頻度と鉛直風速と降雨強度の関係を用いて力学・熱力学効果に分類する手法を提案するものである.同手法を十勝川帯広基準地点流域における5km解像度の大量アンサンブル大雨データに適用した結果,降雨の空間的な偏差に対しては熱力学効果が支配的であり,力学効果は日高山脈周辺での相対的な降雨量の高まりに寄与することがわかった.また,温暖化進行後では降雨量および降雨の空間的な偏差は大きくなるものの,力学・熱力学効果の空間分布は過去の気候の分布と類似しており,降雨偏差の要因は大きく変わらないことが示された.ただし,温暖化進行後の気候における空間偏差の高まりは日高山脈周辺では力学効果と熱力学効果,流域北東の大雪山系の一部では熱力学効果によりもたらされることがわかった.
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上田 聖也, 中津川 誠, 臼谷 友秀
2020 年76 巻2 号 p.
I_25-I_30
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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北海道のような積雪寒冷地では,水資源を積雪に依存しており,気候変動に伴う水循環への影響を受けやすい.さらには,水害や土砂災害への影響が想定され,積雪寒冷地の水循環の変化を踏まえた適応策の検討が急務である.本研究では,寒冷地における気候変動の影響評価のため,気候変動予測データを用いた北海道全域の空間解像度1kmの統計的ダウンスケーリング(SDS)情報を用いて,蒸発散量,積雪深等の水文諸量の推定を行った.推定において,SDSのバイアス補正で参照するデータの変更と,降雪水量の補正を行うことで,流域水収支の整合性が高い推定結果を得た.また,作成したSDS情報を用いて,将来気候における北海道の水文諸量を推定し,年最深積雪の減少傾向を確認した.北海道における気候変動への適応策の多面的な検討への,本SDS情報の活用を期待する.
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田坂 彰英, 田中 賢治, 田中 茂信
2020 年76 巻2 号 p.
I_31-I_36
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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雨量計には,設置地点が平野部に集中しており山地の降水量はあまり観測できていないことと,降雪の捕捉率が低いという問題点がある.したがって,雨量計の観測値は気候モデル等の降水量データの流域スケールでの評価には不向きである.本研究ではこれらの雨量計の問題点に影響されない降水量評価として,河川流量の観測値と陸面過程モデルSiBUCで計算された蒸発散量・土壌水分量・積雪相当水量を用いて,流域の水収支から流域平均降水量の推定を行った.次に,この推定した降水量と雨量計ベースの日降水量グリッドデータを用いてd4PDFの降水量バイアスの評価を行い,前者を用いた方がd4PDFの河川流出高のバイアスと近い傾向をとり,d4PDFの流域平均降水量を適切に評価していることを示した.
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Sabah ALMAHROUQI, Mohammed SABER, Tetsuya TAKEMI, Sameh A. KANTOUSH, T ...
2020 年76 巻2 号 p.
I_37-I_42
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
ジャーナル
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Climate change is a serious issue resulting in global variation in the precipitation pattern. One of the major problems hindering research in examining the change and variation in precipitation trend in Middle East and North Africa (MENA) is a lack of high-quality, long-term data. Therefore, in the current study, the spatial and temporal annual, seasonal, and extreme precipitation trend were analyzed over 118 years (1901-2018) using high resolution Climate Research Unit data (CRU TS 4.03) over the entire region. Durbin Watson was used to test the autocorrelation in the annual and seasonal series, the modified MannKendall (MMK) and Sen's slope estimator tests were used to detect trend for the autocorrelated time series data. The monthly CRU data was then converted to daily using MODAWEC model in order to test the trend in extreme precipitation and for evaluating the change in four indices (R5D, R20, RR1, and SDII). The results showed decreasing trend affecting most of the countries in the region especially in annual and winter series with Yamen, Palestine and Lebanon got the highest significant negative trend. There were no signal toward negative or positive trend in extreme precipitation series. Arabian Peninsula (Kuwait, Qatar, Yamen, and Bahrain) showed positive trend in extreme indices (R5D, R20, SDII) while the western side exhibited negative trend. North Africa had stationary condition except for Egypt where negative trend detected.
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丸谷 靖幸, 渡部 哲史, 玉川 一郎
2020 年76 巻2 号 p.
I_43-I_48
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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本研究では,観測データの乏しい流域(例えば気象観測期間が数年から10年程度)における気候変動影響評価研究を行うことを目的に,Web等から容易に入手可能な再解析データ(JRA-55)に対し,既往の研究で提案されている統計的補正手法を複数地点に適用し,準観測データを作成した.この統計的補正手法を構築するに当たり,どの程度の年数の観測値を利用することで,補正精度が高い準観測データを作成することが可能かを検証するため,本研究では最新の観測年から20年,15年,10年,5年と遡った期間を較正期間とすることで統計的補正手法を構築し,統計値および降水頻度分布の比較を行った.その結果,最低15年程度の観測(較正)期間を用いることで低頻度に発生する高降水量も含めて,観測値の統計情報を反映した高精度な準観測データを作成できる可能性が確認された.
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北野 利一
2020 年76 巻2 号 p.
I_49-I_54
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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多地点の降雨量は流域の総雨量を検討する重要な要素であり,降雨量の空間相関は,洪水リスクの算定に欠かせない情報である.多変量極値を扱う統計学では,各々の地点に設けた閾値をいずれか1つを超過した極値で定義するのが数学的に都合が良いため,そのように定めた依存関数が研究されてきた.本研究では,空間相関を直接に扱うため,同じ気象擾乱で生起する降雨量の極値が閾値を超過する数をもとに,相関関数が定義できることを示す.また,乱数を用いた数値実験法により,相関係数の統計的変動性も具体的に示す.
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吉岡 伸隆, 井手 淨, 守田 優, 平林 由希子
2020 年76 巻2 号 p.
I_55-I_60
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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近年,地球温暖化により豪雨の頻度や強度が増加傾向にあるとされるが,現在の洪水防護の基準となる計画降雨は過去の観測データから作成されたものであり,温暖化の影響を考慮していない.そこで本研究では,都市河川である東京の善福寺川流域を対象とし,d4PDFを用いて4℃の温暖化を想定した場合に計画降雨がどの程度変わりうるか,その計画降雨を用いた場合の最大浸水深および浸水面積がどの程度変わるかについて氾濫解析モデルを用いて調査した.4℃上昇時の計画降雨の総降水量は,現在使用されている計画降雨の約1.2倍に増加し,最大浸水深は約1.2倍,浸水面積は約1.5倍に増加した.また,中央集中型の降雨波形を用いると,引き伸ばし法よりも約10%程度氾濫規模が大きくなることが判明した.
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植村 昌一, 橋本 健, 鈴木 博人, 宇治橋 康行
2020 年76 巻2 号 p.
I_61-I_66
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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近年,大雨の強度や頻度の増加など,温室効果ガスの排出による気候変動の影響とみられる現象が全国各地で起きている.鉄道輸送の安定性においてもこの影響を受ける可能性があり,対策を検討するためには,影響を把握することが必要である.本研究では大雨時における鉄道輸送の安定性に着目し,気候変動の影響を評価することを目的とした.解析では,気象庁気象研究所で実施された温室効果ガス排出に関するRCP8.5シナリオに基づく21世紀末の気候の将来予測実験結果(NHRCM02)を用いた.北東北地方における鉄道線区を対象とした検討の結果,21世紀末では,大雨の強度や頻度の増加により運転中止規制時間が現在の3.5~6.5倍,平均で4.7倍に増加するなど,鉄道輸送の安定性が低下することを定量的に示した.
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Ying-Hsin WU, Eiichi NAKAKITA, Masaru KUNITOMO
2020 年76 巻2 号 p.
I_67-I_72
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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We present a study on the future changes of landslide risk in Japan by applying the critical line method to the 5-km regional climate model of NHRCM05. From the six datasets of NHRCM05, we extracted effective rainfall events from the parameter of surface precipitation without any interpolation. In all extracted rainfall events, the critical line method was applied to obtain the frequency of landslide occurrence at each 1 by 1-km grid in the whole Japan. We exhibit the future changes of nationwide landslide risk distribution, monthly occurrence frequency in each geographical region, and occurrence trend in each prefecture. Additionally, from a different perspective, we reveal the relation between landslide risk trend and the geological feature of plate tectonics. As a result, the landslide risk is higher in early summer of July in west Japan and in late summer of September in east Japan. Particularly, the analysis shows a significant increasing trend of landslide risk in Hokkaido area.
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関 洵哉, 中津川 誠, Nguyen Thanh Thu , 沖 岳大
2020 年76 巻2 号 p.
I_73-I_78
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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本研究は,低平地河川に潜在する大規模な洪水リスクと治水施設群の効果の推定を目的とする.研究対象とした千歳川は石狩川の支川で,低平地を流れる河川であるため,本川からのバックウォーターの影響をうける地形的に脆弱な地域である.本研究では千歳川流域の洪水氾濫リスクの推定を行うため,d4PDFのダウンスケーリングデータから得られた大量アンサンブル降雨情報で気候の不確実性を考慮した.この際,d4PDFの現在気候予測データ3,000ケースの中に過去に観測された洪水と類似の事例が存在することを確認した.また,過去の洪水実績を超過すると予測されるケースを千歳川,石狩川双方の流出パターンから見出した.結果として,現在の千歳川に潜在する過去の実績以上の洪水氾濫被害の可能性を,大量アンサンブル降雨情報を用いて示すとともに,それに対する治水施設群の効果を推定した.
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萬 和明, 市川 温, 立川 康人
2020 年76 巻2 号 p.
I_79-I_84
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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気候変動に対する水災害や水資源の適応策における基礎情報として,河川流量の将来変化の適切な予測が必要不可欠である.適切な河川流量の予測を得るために,流出量に対するバイアス補正手法を開発した.流出量は観測値が得られないため,再解析・観測気象データを陸面過程モデルに入力し流出量を作成した.作成された流出量を擬似的な観測値とみなしGCMが出力する流出量に対してQuantile-Quantile Mapping法によるバイアス補正を行った.バイアス補正した流出量は河道流追跡モデルによって河川流量へ変換し,河川流量に基づいてバイアス補正手法の精度を検証した.また,あるGCM出力で定めたバイアス補正関数を他アンサンブルに適用することで本手法の妥当性を検証した.
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柳原 駿太, 山本 道, 風間 聡, 峠 嘉哉
2020 年76 巻2 号 p.
I_85-I_90
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
ジャーナル
フリー
河川への自然排水の有無に着目した2つの浸水シナリオ(自然排水シナリオ,排水不良シナリオ)を設定し,極値降雨データに基づいた日本全域の内水氾濫による被害額と曝露人口を推定した.現在気候において自然排水シナリオでは,期待被害額は6180億円/年,期待曝露人口は5万2695人/年と推定された.一方,排水不良シナリオでは,期待被害額は9兆4224億円/年,期待曝露人口は87万388人/年と推定された.さらに,排水不良シナリオを用いて,近未来気候(2031年~2050年)の被害額と曝露人口を推定した.その結果,現在気候から近未来気候にかけて,被害額は約2倍,人口変化を考慮した曝露人口は約1.6倍に増加した.被害額の増加率は日本海側で高い傾向にあった.また,北陸地方および東京都と埼玉県では,曝露人口の増加率の高いことが示された.
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Teerawat RAM-INDRA, Yasuto TACHIKAWA, Kazuaki YOROZU, Yutaka ICHIKAWA
2020 年76 巻2 号 p.
I_91-I_96
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
ジャーナル
フリー
This paper shows a bias correction method for runoff estimation by a global climate model that considers land cover characteristics. In GCM simulation processes, runoff data is generated by a land surface model that incorporates the direct influence of land cover. This makes the bias correction possible to adapt to the different types of land cover setting in GCMs. In this study, a bias correction method considering land cover characteristics with a combination of a linear scaling factor and an empirical quantile mapping was implemented to MRI-AGCM3.2S runoff data over the Chao Phraya River basin in Thailand. The daily runoff spatial pattern and daily river discharge were used to evaluate the performance of the bias correction. The result shows that the proposed bias correction has better performance than a direct application of empirical quantile mapping bias correction in a sub-catchment and grid to grid-scale grouping for the rainy season. These results underpin the incorporation of land cover information into a bias correction method to improve the performance of runoff and river discharge predictions.
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田中 智大, 姫覧慧 , 立川 康人
2020 年76 巻2 号 p.
I_97-I_102
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
ジャーナル
フリー
チャオプラヤ川流域を対象に,d4PDF流出発生量に基づく河川流量に含まれるバイアスをプミポンダムとシリキットダムのダム流入量,および下流のナコンサワン地点で分けて補正する手法を試みた.d4PDF流出発生量に基づく河川流量は,上流域で過小評価,中流域で過大評価の傾向があり,ダム流入量のバイアス補正と下流ナコンサワン地点でのバイアス補正を組み合わせることにより,異なるバイアス傾向を適切に補正することができた.その結果,2011年洪水の再現期間はナコンサワン地点の無害流量を超える総流量(越水氾濫量)を基準として約100年と推定された.さらに,ADU法に基づく高速化氾濫モデルを構築し,越水氾濫量上位60事例の氾濫解析を行った結果,最大氾濫量が約1.5倍異なる一方,氾濫面積は大きく変化しなかった.2011年洪水規模以上の最大クラス洪水では,浸水範囲は大きく変わらず,浸水深が深くなることが示唆された.
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Do Ngoc KHANH, Alvin C. G. VARQUEZ, Manabu KANDA
2020 年76 巻2 号 p.
I_103-I_108
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
ジャーナル
フリー
Urbanization is an essential, yet underrepresented, parameter when investigating futuristic climate change of cities. The change in 2 m air temperature in August between the 2006–2015 period and the 2046–2055 period for 33 megacities and 10 emerging megacities under RCP8.5 emission forcing and SSP3 was projected with the consideration of both global climate change (using pseudo-global warming method) and local urbanization (using global urban sprawling map, distributed urban morphological parameters, and hourly anthropogenic heat emission dataset).
In newly urbanized area, the urbanization effect will be significant, accounting for (13.5 ± 5.9) % of the total temperature change. In existing urban areas, the effect will vary depending on the current degree of urbanization. When viewed over a regional scale, the effect will be rather insignificant. It was observed in some cities that urbanization effect originating from urban area was advected by the wind to non-urban area located kilometers downwind.
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土居 慶祐, Menaka REVEL , 花崎 直太, 鼎 信次郎
2020 年76 巻2 号 p.
I_109-I_114
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
ジャーナル
フリー
気候変動や人間活動が水循環に与える影響をより正確に把握するためには,高解像度での全球水資源アセスメントが必要である.高解像度シミュレーションに欠かせないグリッド間の水配分や中規模貯水池操作などの機能を備えた全球水資源モデルH08を利用することにより,高解像度水資源アセスメントの実現可能性が向上すると考えられる.本研究では,H08で空間解像度5分の計算を行い,従来の解像度0.5度の場合とモデルの挙動を比較することにより,高解像度全球水資源モデルにおける取水源の変化やグリッド間導水機能の重要性についての知見を得た.さらに,高解像度水資源モデルによる大規模灌漑地域や都市における水需給評価の一定程度の有用性を示した.
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東山 晃太, 吉川 沙耶花, 鼎 信次郎
2020 年76 巻2 号 p.
I_115-I_120
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
ジャーナル
フリー
世界人口は2100年までに概ね増加の傾向にあると推測されている.しかし,耕作地面積には制限があるため,持続可能な農業生産への対応が必要とされている.本研究では,持続可能な農業生産を脅かす原因の一つとなる灌漑耕作による塩類集積に着目した.文献調査による塩類集積が発生するメカニズムに基づき,土壌タイプ,乾燥,地下水位,地下水の状態,灌漑方式の5つの因子を定めることで,灌漑農地における塩類集積の潜在的リスク評価を全球規模で行った.結果として,灌漑農地の8割が何かしらの潜在的リスクを抱えており,2割以上が塩類集積に対して高いリスクを持っていることが明らかとなった.さらに,天水農地に対しても6.5割の地域が塩類集積の潜在的リスクを持っていることが分かった。
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庄司 悟, 岡﨑 淳史, 芳村 圭
2020 年76 巻2 号 p.
I_121-I_126
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
ジャーナル
フリー
近年,過去の気候変動の再現にデータ同化が取り入れられている.本研究では,プロキシの酸素同位体比を用いたデータ同化によって過去千年間の気候変動を再現するために,第一推定値を変えた複数の実験を行った.本研究の結果から過去の大規模な火山噴火後における全球的な気温低下や中世温暖期と小氷期気温差の分布を再現した.火山噴火後の気温低下はデータ同化を用いた他の研究による再現結果でも同様に確認できた.一方,中世温暖期と小氷期の気温差の分布では太平洋熱帯域を中心に違いが見られた.他の研究では統計的なプロキシモデルを,本研究では同位体比の変動過程に対応したプロキシモデルを用いている.データ同化に用いた気候モデルやプロキシ以外に,この手法の違いが再現結果の差に表れていることが示唆される.
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田村 隆雄, 上田 尚太朗, 武藤 裕則, 鎌田 磨人
2020 年76 巻2 号 p.
I_127-I_132
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
ジャーナル
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流域治水における活用を念頭に,遮断蒸発率と地表面抵抗の増強による森林の洪水低減機能の向上について洪水ピーク流量の視点から検討した.徳島県内に位置する2つの林地(一斉植林・皆伐型施業のスギ人工林,弱間伐・択伐型施業のスギ・ヒノキを中心とする針広混交複層林)を対象に水文観測を実施し,地表面流分離直列二段タンクモデルと将来予測降雨を用いた流出シミュレーションを実施した.遮断蒸発率と地表面抵抗の洪水ピークの流量低減と遅延効果について検討した結果,対象としたスギ人工林を針広混交複層林・弱間伐に変更すると20%程度の洪水ピーク流量低減効果を得られる可能性が示唆された.
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Yuriko OKAZAKI, Shinichiro OKAZAKI, Yoshio KAJITANI, Masahide ISHIZUKA
2020 年76 巻2 号 p.
I_133-I_138
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
ジャーナル
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Risk evaluation of bridge collapse requires a regression model for river discharge that not only covers the situation during precipitation but also an ordinary situation without it. Although data-driven approaches using machine learning have been proposed to construct regression models for forecasting river discharge following precipitation, the distribution of discharge data is imbalanced. Thus, these regression models usually cannot track rare behaviors, such as a sudden increase in discharge because of heavy precipitation. This study aims to improve the performance of regression models by resampling learning data. The discharge data of Doki river targeted in this study has an imbalanced distribution because of rare precipitation. This data imbalance is alleviated using the resampling technique by oversampling synthetically minor data and undersampling major data. Regression models were constructed by learning the original data and resampled data, respectively. The performances of these models were compared to show that the alleviation of imbalanced learning data significantly improves the regression accuracy of the high-discharge region while maintaining the regression accuracy of the low-discharge region.
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及川 雄真, 小山 直紀, 山田 正
2020 年76 巻2 号 p.
I_139-I_144
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
ジャーナル
フリー
気候変動による洪水リスクの増加に対応するためには高精度な洪水流量の推定が必要となる.本論文では,過去に経験していない大規模の洪水に対して,降雨流出モデルを適用することを想定し,利根川上流域に存在するダム流域を対象に降雨流出モデルのパラメータ推定を行い,そのパラメータ特性を洪水規模の観点から分析を行い,小・中規模洪水のパラメータを用いて大規模洪水の再現計算を行った.その結果,小規模洪水と中規模洪水のそれぞれにおけるパラメータ平均値を用いた流出計算結果と比較し,Nash係数による評価ではどちらでも0.7を超える高い再現性があることがわかった.また,ピーク付近の流量は,中規模洪水以上のパラメータを用いた場合の方が過小評価傾向が改善されることがわかった.
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瀧川 紀子, 田中丸 治哉, 多田 明夫
2020 年76 巻2 号 p.
I_145-I_150
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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本研究は,低平水田地域である新潟県の白根郷地区に対して2種類の内水氾濫解析モデルを適用し,それらのモデル性能を比較検討することを目的とする.内水氾濫解析モデルには,(1)地形適合セルという任意多角形によって微細地形を表現し,隣接セル間の水移動で氾濫水の伝播が表現できるセルモデルと,(2)従来から浸水想定区域図の作成等で用いられてきた50mの均等なメッシュによって平面二次元流れを追跡する格子モデルの2手法を採用した.平成23年7月出水でモデルの検証を行ったところ,河川・排水路水位の再現性はセルモデルの方が優れており,均等メッシュによる格子モデルでは,洪水後半の水位低減が実績よりも早かった.一方,氾濫面積については,セルモデルが過小,格子モデルが過大に推定された.
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滝澤 一輝, 山本 隆広, 込山 晃市
2020 年76 巻2 号 p.
I_151-I_156
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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春先の融雪流出を精度良く予測することは利水面,防災面で重要である.融雪流出解析の不確実性の一つに,気温減率がある.本研究では,2つの地域を対象に各年の各月で気温減率を推定することによって,気温減率の季節性,地域性を評価した.さらに,推定した気温減率を用いて信濃川上中流域の大小4つの流域で融雪流出解析を行い,気温減率が解析期間を通じて一定な場合と比較することによって,融雪流出解析において気温減率の季節性を考慮することの重要性を示すことを目的とした.その結果,気温減率には季節性,地域性が存在することを確認できた.融雪流出解析では,推定した気温減率を用いることによって,河川流量の再現性の向上を図ることができた.また,降雪が少ない地域では気温減率が融雪流出解析に及ぼす影響が小さいことが分かった.
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横山 洋, 吉川 泰弘, 伊波 友生, 矢部 浩規
2020 年76 巻2 号 p.
I_157-I_162
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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結氷河川の解氷期に発生するアイスジャムは,水位の急上昇や流下河氷への巻き込まれ事故などを引き起こすこともあり,結氷河川の維持管理上の課題の1つとなっている.アイスジャムによる被害軽減策として,実用的なアイスジャム発生予測技術の開発があるが,現地適用に向けて近年の現地事例を収集することおよびモデル適用の課題と解決を進めることが重要である.本研究ではまず2020年3月に北海道内の複数河川で発生したアイスジャムの発生機構を整理し,河川監視カメラによる河道内画像と水位変動により発生時期把握が可能なことを確認した.続いて今回のアイスジャム事例の発生リスク評価を行った.アイスジャム発生に影響する因子について2018年発生事例との比較を行うとともに,河氷厚予測モデルによる発生予測の問題点と改善点について整理した.
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小池 太郎, 吉川 泰弘, 横山 洋, 伊波 友生, 川邊 和人
2020 年76 巻2 号 p.
I_163-I_168
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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本研究は,2018年3月に北海道の常呂川で発生したアイスジャム現象を明らかにすることを目的とした.気象,水位データとともに,定点カメラによる動画撮影,ドローンによる撮影,アイスジャム発生後の河氷サイズ計測,痕跡水位を計測し,現象解明を試みた.本研究により以下のことが明らかとなった.アイスジャム現象により,水位は2時間で3.1mまで急速に上昇した.河川の氷の大きさは、アイスジャム発生地点付近では大きく、上流側では小さい.定点カメラより,アイスジャム発生前後の河氷の流下速度が最大3.5m/sと分かった.流量増加に伴い多くの水が河氷とともに流下し,河道内の堆積しやすい箇所に河氷が詰まり,流下が阻害され水位上昇する.
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山田 隆司, 吉川 泰弘, 小池 太郎, 横山 洋
2020 年76 巻2 号 p.
I_169-I_174
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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本研究は,橋脚部におけるアイスジャム現象の解明のために,実河川の現象に近い氷板と晶氷が混在する実氷を用いたアイスジャム実験を実施した.晶氷の影響を明らかにするために,氷板模型速度と流下堆積枚数,高水敷での氾濫範囲,水位水深変動を用いて検討を行った.晶氷を含む場合は,流下する氷板の下に晶氷が堆積して氷同士が固着し大きな塊として流下し,形状抵抗が大きくなる.このため,氷板速度は遅くなり,流下堆積枚数が増加することが分かった.また,晶氷を含む場合は,大きな氷塊となって流下するため,アイスジャム発生後の上流での氾濫速度は速く,晶氷を含まない場合に比べて急激に氾濫することが推察された.最終的な上流での氾濫範囲は晶氷有り無しで同程度であった.
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Hwayeon KIM, Eiichi NAKAKITA
2020 年76 巻2 号 p.
I_175-I_180
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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Recently, due to the climate change, Japan has suffered from devastating hydro-meteorological hazards caused by localized heavy rainfall known as Guerrilla heavy rainfall (GHR). GHR causes a disadvantage of very short lead time for early warning and evacuation. For accurately predicting disasters triggered by GHR, it is necessary to develop a methodology integrating early detection and quantitative risk prediction methods. By using the early detection method, the existence of the first echo of hydrometeors in a convective cell was identified. Then, to predict the risk more precisely, the output of risk prediction is categorized into four risk levels based on the maximum rainfall intensity of rain-cells. To accomplish accurate prediction, a variable selection method is applied to identify the relevant variables obtained by radar observation data. With selected relevant variables, multiple linear regression equations for risk levels are fitted by 10 GHR events. The most appropriate multiple linear regression equation is verified by a Receiver Operating Characteristic (ROC) analysis. As the results, it is possible to predict the risk quantitatively with a high accuracy of 81%.
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岡地 寛季, 山田 朋人
2020 年76 巻2 号 p.
I_181-I_186
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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レーダ観測はその汎用性から降雨や風速を通した雲内の構造推定に用いられる.本研究では大気境界層内の降雨と海面砕波飛沫を対象として2018年夏季に観測を行った.レーダ観測において重要な規格化レーダ断面積はMie散乱原理に任意の粒径分布を仮定することで導出することができる.そこで,本研究では観測から得られたレーダ規格化断面積と散乱原理から求めた規格化レーダ断面積を比較することで降雨と飛沫の粒径分布のパラメタを推定するアルゴリズムを提案する.
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Fauziana AHMAD, Kosei YAMAGUCHI, Eiichi NAKAKITA
2020 年76 巻2 号 p.
I_187-I_192
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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The investigation of single cell to multicell in the cluster thunderstorms using vertical vorticity analysis will be proposed. The techniques of vortex tube structure and identification of initial stage values of the first radar echo were applied to rainfall events with the unstable atmospheric conditions in Kinki region, Japan. Cluster thunderstorms cases during the two events were selected and the analysis of single cells to multicells were performed by investigating the initial stage of vorticity values and their structures. The vertical vortex tube of vorticity analysis was shown to examine the signature of merging of single cells to mutlicells. In the case of two events, the criteria index of persistence development for cells and dissipating cells were established and it was found that the positive vorticity greater than 0.015s-1 possibly prolonged the duration of lifetime more than one hour. In the meantime, the positive vorticity less than 0.0025s-1 might shorten the lifetime of single cells in the multicell clusters. The signature for merging of single cell to multicell was difficult to discover due to the change of core vorticity at upper level height before single cells merge into multicells.
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大屋 祐太, 山田 朋人
2020 年76 巻2 号 p.
I_193-I_198
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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2014年9月に北海道の石狩・胆振地方で大雨特別警報が発表された.同事例は,降雨域の南西側で次々と新しい降雨セルが発生し,北東側へと伝播する典型的なバックビルディング型の特徴を示した.特に降雨が集中した時間に対し,3基のドップラーレーダを用いて風速場を算出し,降水強度との関係を示した.対流圏下層において南東から流入した暖湿空気塊が胆振地方で収束し,上空への強い上昇気流をもたらした.上空での上昇気流が鉛直渦構造へと形を変えた様子が風速場解析から明らかになり,降水強度が特に強い領域・時刻と一致することを示した.本事例における鉛直渦構造と降水強度の関係は,バックビルディング型の線状降水帯に関する物理過程を説明できる可能性を示唆した.
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大石 哲, 南郷 脩介, 梶川 義幸, 山浦 剛, 鈴木 賢士, 山口 弘誠, 中北 英一
2020 年76 巻2 号 p.
I_199-I_204
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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降雨予測に有効な雲内の雨滴の質量や雲中の降雨強度を算出するためにレーダーを活用する際,レーダーが観測している空間における雨滴の粒径分布を算出することが必要になる.降水粒子を直接観測してレーダーと同期観測に用いられてきたビデオゾンデは限られた観測窓のため粒径分布の空間代表性について検討されおらず,特にレーダーパラメータに合わせた検討は行われてこなかった.本研究では,ビデオゾンデの観測情報から粒径分布を算出する際に空間代表性を担保できるサンプル数を求め,実際のビデオゾンデ観測から粒径分布を算出する方法を提案してその評価を行う.
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高見 和弥, 鈴木 賢士, 山口 弘誠, 中北 英一
2020 年76 巻2 号 p.
I_205-I_210
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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冬期の降水の雨雪,降雪の乾湿の判別は雪害のリスク評価を行ううえで重要な情報である.一般に地上気温を閾値として判別が行うことが多いが,精度を向上するためには降水粒子が落下する過程での熱収支を考慮する必要がある.このために上空の0℃高度が重要なパラメータとなる.本研究では偏波レーダーを用いて0℃高度を推定する手法を開発し,既往の手法に比べ誤差を増やすことなく0℃高度が地上付近にある場合も判定可能な事例が増えることを確認した.また,推定した0℃高度とレーダー反射因子から求める粒径を初期値として雪片の融解モデルの計算を行った.計算される降水粒子の含水率を用いることで,地上気温のみを用いるより,地上観測に即した降水形態の時間変化を表現できることが示唆された.
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小野村 史穂, 南光 一樹, 仲吉 信人
2020 年76 巻2 号 p.
I_211-I_216
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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例年豪雨による災害が多発する中,高時空間解像度の地上降水データの需要が高まっており,自動車を用いた降水移動観測技術について,国内外で試行されている.本研究では,降水を定量的に移動観測するため,小型で安価な動体検知素子を用いて,車載に適したドップラー降雨センサを作成した.実際に,そのセンサを自動車に搭載し,レーザー式雨滴計,風向・風速計,GPSも併設して,移動観測試験を実施した.その結果,センサから出力される電圧の変動成分(移動平均からの偏差絶対値)は,降雨に応答するが,雨滴運動に関係する相対風速の影響も強く受けていることも分かった.したがって,変動成分を相対速度で補正したところ,レーザー式雨滴計の降水強度と明確な線形関係を有し,線形モデル(R2=0.84)により降水強度の推定が可能であることが示された.
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Aulia Febianda Anwar TINUMBANG, Kazuaki YOROZU, Yasuto TACHIKAWA, Yuta ...
2020 年76 巻2 号 p.
I_217-I_222
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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This research focused on investigation of impacts of model structures and soil parameters of Land Surface Models (LSMs) from the view point of runoff characteristics and simulated river discharge. In this study, MRI-SiB output was used as reference data. While, SiBUC model was utilized to investigate the impacts of changing model structures and soil parameters. The findings of this study indicated that: (1) introducing a structure for direct infiltration into root zone resulted in decreased of surface runoff by 60% and 7% using SiBUC and MRI-SiB soil parameters, respectively, and (2) consideration of gravitational drainage for soil water flux calculation contributed to an increase of surface runoff by 56% and decrease of evapotranspiration by 5%. Impact of changing soil parameters and model structures was further investigated by analyzing the change of soil moisture movement and evapotranspiration components.
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久岡 伸一, 齋藤 雅彦
2020 年76 巻2 号 p.
I_223-I_228
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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斜面表層からの降雨浸透および表面流出過程について,既往研究では,多くの場合で均一場が仮定されている.一方,現実の斜面では,透水性や保水性に関する物性値は空間的なばらつきや偏りを有し,局所的な湧水の発生など,斜面下部以外の領域からも浸透した降雨の表面流出が発生すると考えられる.本研究では,自己相似型の透水係数分布モデルによって3次元不均一場を生成し,様々な条件(透水性,表層厚,および降雨パターン)における表面流出量や流出形態について数値シミュレーションにより均一場と比較した.その結果,均一場を仮定した場合,表面流出量が過小評価される傾向があること,および斜面の透水性と豪雨時の表面流出率との関係は,対数関数で近似可能であることを示した.
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稲垣 智也, 田中 賢治, 田中 茂信
2020 年76 巻2 号 p.
I_229-I_234
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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地表面温度は衛星観測から直接的に得られる物理量であり,モデルの計算結果を衛星観測値と容易に比較することが可能であるため,水・熱収支解析の精度を確認するための一つの指標として用いることができる.本研究では,陸面過程モデルSiBUCによる,ミャンマーやタイを含む範囲における地表面温度と,衛星データMODISの地表面温度プロダクトの比較を行い,モデル内のいくつかの入力データの改善を試みた.比較の結果,SiBUCがMODISに比べて基本的に地表面温度を過大評価している可能性が示唆された.また,地表面温度が気象強制力や地表面状態に関する入力データの精度に強く影響を受け,入力データの精度を高めることで地表面温度解析の改善が一定程度可能であることが明らかとなった.
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牛山 朋來, 中村 要介, 伊藤 弘之
2020 年76 巻2 号 p.
I_235-I_240
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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令和元年台風第19号に伴い長野県千曲川で発生した洪水に対して,開発中のアンサンブル洪水予測手法を適用し,洪水流出の予測可能性を検討した.本手法は,領域アンサンブル予測による降雨予測と,降雨流出氾濫(RRI)モデルを組み合わせたものである.本手法により本事例を再現したところ,洪水水位と洪水到達時刻を洪水発生5日前から再現することができた.特に,洪水到達の1.5~2.5日前の予測シミュレーションでは,水位を1m以下の誤差で,洪水到達時刻を3時間以内の誤差で再現しており,過去の研究に比べて高い精度が得られた.これは,境界条件として用いた気象庁の全球モデルによる台風進路の予測精度が,本事例では特に高かったことを反映していた.今回の結果は先進的な洪水予測の可能性を示した.
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森山 文晶, 芳村 圭
2020 年76 巻2 号 p.
I_241-I_246
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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領域規模の大気海洋相互作用が海洋窒素循環に与える影響を検証するため,チリ南部域を対象に領域海洋生態系モデルROMS-NPZDによる再現実験を行った.初めに領域大気モデルRSM及び領域大気海洋結合モデルRSM-ROMSの検証を行うと,RSM-ROMSは地上変数観測の季節変動と日日変動を捉えており,また大気海洋相互作用のフィードバックによりRSMと比べて誤差が低減したが,逆に海面水温の誤差は拡大した.次にRSM及びRSM-ROMSそれぞれの大気場をROMS-NPZDの境界条件として用いた実験(UCPL実験,CPL実験)を衛星観測を用いて検証すると,CPL実験はクロロフィルa濃度の年平均からの偏差の傾向をつかんだものの,UCPL実験がもつ水平分布の誤差が拡大した.また大気海洋相互作用のフィードバックが海中の光環境を通じて循環場に影響を与える可能性が示唆された.
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横山 彩希, 稲垣 厚至, 神田 学, 輪嶋 正隆
2020 年76 巻2 号 p.
I_247-I_252
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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本研究はサーモカメラを用いた表面温度計測と,熱画像風速測定法に基づいた地表面近傍風速の直接観測に基づき,バルク法を用いた面的な顕熱フラックス計測手法を開発する.これを人工芝が張られた屋外サッカー場における大気陸面間の面的熱交換測定に応用し,その手法の妥当性を検証する.8月と3月に埼玉スタジアム2OO2にて観測を実施した.観測では本手法の精度検証のため,放射収支及び渦相関法による顕熱フラックスの測定を実施した.結果として,まず熱画像風速測定法による風速が精度よく地表面近傍風速を測定できていることを確認した.次に現地で測定したバルク係数を用いて,面的な顕熱フラックス分布を測定し,グラウンド上の不均一な分布形状を明らかにし,それが主に,風速の不均一性に起因していることを明らかにした.
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横内 浩志, 稲垣 厚至, 神田 学, 小野寺 直幸
2020 年76 巻2 号 p.
I_253-I_258
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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格子ボルツマン法LESモデルを用いた都市大気境界層の大規模数値計算モデルを用いて,都市の自動車由来大気汚染物質を想定したスカラーの動態評価を行った.スカラーはパッシブスカラーを仮定し,その動態計算をLagrange的手法により表現した.本モデルを,移動排出源由来の大気汚染が深刻化しているジャカルタを対象に計算を実施した.その際に,ジャカルタで以前計画されていた沿岸巨大建造物GARUDAの有無による2通りの計算を実施し,それが下流の都市に及ぼす影響を評価した.地表面付近において,GARUDAの有無に由来する主流方向風速分布,粒子濃度分布に顕著な差は確認できなかった.一方,建物レベル(10[m] − 30[m])では,GARUDAの影響による風速の低下に伴い,粒子密度が増加していることが確認できた.
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山口 弘誠, 大野 哲之, 中北 英一
2020 年76 巻2 号 p.
I_259-I_264
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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持続的かつ複雑なパターンを示す対流形成をモデルで再現することは,数時間先を対象とした線状降水帯予測において重要な課題である.対流形成の原因は局所的な温位勾配による渦度の発生と関連があると考えられる.本研究では傾圧場が対流を形成する効果を初期値へ反映するため鉛直渦度のデータ同化手法を考案した.運動方程式・質量保存則・エントロピー保存則の下で変分法を適用し,水平風速・温位・鉛直渦度の関係式を導出した.関係式を観測演算子に設定し正負のペアを持つ渦管を同化したところ,流れの場に依存するモデルの誤差共分散構造を通じて相対的に高い温位域と上昇流域が対応する分布が出現した.理想的な対流の数値シミュレーションとの比較から温位と上昇流の対応関係は深い対流の形成と整合的であり,本手法の有効性が示唆された.
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井上 涼, 稲垣 厚至, 神田 学, 森 康彰, 新納 幸成
2020 年76 巻2 号 p.
I_265-I_270
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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境界層の発達の度合いが異なる流入風を用いて,新宿の高層ビル群を含む実都市建物幾何を対象とした格子ボルツマン法に基づくラージエディシミュレーションによる大規模都市乱流数値計算を行った.吹送距離,ラフネスブロックの設定により,境界層高度が異なる流入風を3種類作成し,同じ検査領域において,中立大気安定度下での平均風速場への影響を調べた.都市キャノピー層を含む地表面近傍から平均建物高さ付近までの高度で,異なる事例間での各高度の平均風速比が摩擦速度比と一致した.摩擦速度で規格化した街区内平均風速は建物幾何形状によって決定されており,ある1風向の平均風速場を摩擦速度でスケーリングすることにより,風環境の快適性,安全性を考える上で重要な,任意の時間の街区内平均風速分布を得る簡便な診断手法を示した.
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伊落 貴之, 小田 僚子
2020 年76 巻2 号 p.
I_271-I_276
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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環境省では熱中症予防を目的として全国約840地点を対象にWBGT情報を提供している.しかしながら,これらは点データであるため,観測の行われていない地域を含めた面的なWBGTを把握することは困難である.そこで本研究では,首都圏における広域的な熱ストレス評価を行うために,ひまわり8号の輝度温度情報を用いてWBGT推定式を提案することを試みた.ひまわり8号の輝度温度データは,WBGT地上観測値と相関の高かった熱赤外波長帯であるBand7,13,15を選定した.輝度温度には閾値を設定することで厚い雲の影響を除去し,重回帰分析からWBGT推定式を導出した.その結果,首都圏74地点のうち約75%の地点において,WBGT地上観測値との二乗平均平方根誤差が約3℃以内で評価できることが示された.
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高瀬 裕介, 竹尾 友希, 仲吉 信人
2020 年76 巻2 号 p.
I_277-I_282
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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都市域の大気・熱環境は市民の生活に直結する.限られた環境整備予算の中でこれらの改善を図るには,対策にあたる優先順位の設定が重要である.本研究では大気汚染レベル,および賑わい度からなる街区の総合的魅力度をストリートポテンシャルと定義する.重点的に環境整備が必要なエリアを見える化し,環境整備予算の効率的な運用への貢献を試みる.本研究は低コストエアロゾルセンサとデジタルビデオカメラ,物体検出アルゴリズムから構成されるストリートポテンシャル評価システムの構築を目的とする.エアロゾルセンサは個数濃度を大幅に過大評価する傾向が見られたが,補正が可能であった.物体検出アルゴリズムを用いた歩行者数の自動抽出は目視と同程度の精度であった.また屋外移動観測では汚染濃度と賑わい度の同時測定が可能であった.
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関 日菜々, Alvin C. G. VARQUEZ , 足永 靖信, 仲吉 信人, 神田 学
2020 年76 巻2 号 p.
I_283-I_288
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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気候変動と都市化がもたらす社会及び健康への影響を緩和し適応するために熱リスク評価が必要である.
そこで,本研究では,気象数値シミュレーションによって再現された温熱環境と,混雑状況をモニタリングしたビッグデータを融合し,消費者の総熱リスクを評価する新しい手法を提案した.具体的には,(1)街区の温熱環境(=ハザード),(2)移動に要する時間(=曝露量),(3)店舗利用人数(=脆弱性)に基づき,ハザードと曝露量から個人の熱リスクを,脆弱性から人口集積リスクを定義した.さらに,個人の熱リスクと人口集積リスクを用いて消費者の総熱リスクを定義し,温熱環境と人口集積を考慮した熱リスク指標とした.この指標を用いた結果,ATMでは,消費者の総熱リスクは個人の熱リスクに依存しやすいことが分かった.
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井手 淨, 井戸田 優希, 吉岡 伸隆, 田上 雅浩, 松村 明子, 小川田 大吉, 花崎 直太, 平林 由希子
2020 年76 巻2 号 p.
I_289-I_294
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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本研究では農業活動に係る水利用を推計可能な水資源モデルH08を関東地域の利根川‐荒川流域に適用し,渇水時に近傍の河川水だけでは農地の水需要を満たすことができない灌漑水の不足ポテンシャルを算出し,実測の地下水位および地盤変動量との比較検討を実施した.推計した灌漑水不足ポテンシャルの時系列変動は月別の地下水位情報から読み取れる水位低下時期や年々の地盤変動量の推移とも整合し, また既往の渇水イベント時に地下水の汲み上げが多くなり,地盤沈下が進行したこととも整合する.推計値と地下水位変動間の関係を定量的に導くには課題が残るものの,地下水の揚水と揚水に伴う地下水位変動を間接的に予測するツールとして将来的にH08が利用できる可能性が確認された.
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佐藤 豊, 福岡 捷二
2020 年76 巻2 号 p.
I_295-I_300
発行日: 2020年
公開日: 2021/11/30
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堤防基盤の漏水に伴う破壊は,基盤の表層土質構造に密接に関係することが,現地や模型の堤防で確認されている.基礎地盤の表層土質構成を把握するものとして,治水地形分類図があるが,基盤漏水を考えて作成されたものではないため,旧河道は明瞭,不明瞭での表記であり,旧河道の形成過程や漏水との関係を読み取ることはできない.本研究は,旧河道の河道形成が読み取れる地形分類図を作成し,現地調査等を実施し,旧河道の新・旧区分を行うことで基盤漏水に影響のある旧河道を抽出できることを示した.また,地質縦横断図から旧河道と氾濫原の土質構成を調べた結果,表層粘性土が3m以下の旧河道付近で漏水が発生することを示した.さらに,200m程度の範囲内で旧河道に囲まれている氾濫原では噴砂を伴う漏水が発生しやすいことがわかった.
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