2020 年 76 巻 2 号 p. I_841-I_846
開水路系を対象に,水路内貯留を用いて水需要と水供給の不一致を吸収するための,ゲート操作手法を検討した.対象地域の農業用水路は下流側地域で水不足の問題を抱えており,観測結果から,上流側で用水が優先的に取水されるため需要ピーク時に下流側で水不足が生じていると推察された.この問題に対処するため,上流制御ゲートと下流制御ゲートの間を水路内貯留の容量として用い,水需要のオフピーク時に用水を貯留しピーク時に放流する手法を提案した.本手法により,水路上流域でのピーク需要時でも分水口や水路下流端で流量低下を緩和できることが,数値解析上で示された.調整池が造成できない現場では,水路側壁を嵩上げし水路内貯留の容量を増強することで本手法を適用できる.