2021 年 77 巻 2 号 p. I_1297-I_1302
地表面近傍の2次元的な風速場を推定する手法として熱画像風速測定法(Thermal Image Velocimetry, TIV)が存在する.本手法はサーモカメラを用いて地表面温度を観測し,乱流熱交換に起因する温度変動を抽出,その空間パターンの移流速度ベクトルから地表面近傍の風速を推定するものである.本研究では熱容量が大きく,乱流熱交換に起因する温度変動が小さいためTIVの適用が難しいと考えられていた都市街区のアスファルト道路に対してTIVを適用した.結果として都市街区にもTIVを適用し,交差点で生じるような複雑な風の流れを観測できることを示した.熱容量が大きい表面に対しても,表面温度スペクトル解析からノイズレンジと思われる周期帯より大きな時間フィルターをかけることで,精度よく風速測定できることが分かった.感度が低いサーモカメラでも,ノイズレンジより十分大きなフィルターをかけることで移流速度ベクトルを推定することができた.また,フィルターサイズによってTIVが追跡する乱流構造の大きさが変化する可能性も示した.